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第2話 古代遺跡へ




「あー、洞窟の入り口、あったぞ」



 アルヴァインが皆を呼ぶ。

 今、四人は皇帝の命を受けて、古代遺跡があるという洞窟の前に立っていた。この国に来て3つ目のダンジョンだ。

 森林迷宮と呼ばれる、天然の森の迷路の奥深くに、その洞窟はあった。



「・・・中に入ろう」



 情報によると、この遺跡が発見されたのはごく最近の事。活発になっている地殻変動の影響で、洞窟の一部が崩れ、その先に新たな遺跡が見つかったらしい。



「森の中も暗かったけど、やっぱり洞窟の中は何も見えないね~」

「まずは明かりを点けましょう。・・・『ルミナスライト』」



 そうエルザが唱えると、彼女の手のひらから小さな光る球体が出現する。そして彼女を中心に、暖かく柔らかな光が広がっていく。



【ルミナスライト】

 光属性の中級魔法で、周辺を明るくする球体を発生させる魔法だ。火属性にも同じ照明魔法の『トーチ』があるが、広範囲に広がる安定した光と持続性で、こちらの方が好んで使われる傾向がある。



「思ったよりも湿度が低いのね。洞窟にしては珍しいと思わない?」



 洞窟というのは、染み出した地下水などで湿度が高い事が多い。



「だな。街中より快適な感じがするぜ」


「快適なのは良い事だと思うのだけれど・・・」


「エルザはジメジメ、嫌いだもんね!」


「・・・好きな人は少ないんじゃないか?」


「そうね、湿気が多いのは好きじゃないわ。乾燥しているのはもっと嫌いだけれど」


「わがままなお嬢さんだぜ」


「ふぅん、何か言ったかしら?」


「い、いえエルザ様、何も言っておりません!」


「ならよろしい」



 くだらない会話をしながら一行が進んでいくと、フィオナの耳がぴくっと反応を見せた。



「みんな待って、敵がいる。 だいたい200m先・・・数は1、だけど大きい」



 獣人とのハーフであるフィオナは、聴覚がヒューマンと比べて圧倒的に発達していた。屋外ならば1000m先の微かな音すら聞き分け、様々な情報を得ることができるのだ。



「あと180。ゆっくりこっちに来てる。この音だと、たぶんストーンビースト」


「そう、少し厄介ね」


「・・・問題ない。リュウノアギトを持ってきた」


「あれ、完成してたのか!?」


「ほんと、アンタって大事な事を一切言わないわよね」



 リュウノアギト────

 様々な武器種の中で、【大剣】と呼ばれるカテゴリの武器である。

 剣と言えば切断というイメージがあるが、巨大化した大剣は、切断力よりも破壊力を重視した武器である。



「ストーンビーストって固いもんねー! 打撃属性が私のフェザーナックルだけだと大変だったよ。よろしくね!」


「私の魔法はダメね。火も風も効果が薄いわ」


「それじゃ、俺が後衛、エルザはサポート、フィオナが遊撃、ランスロットが前衛でよろしく!」


「・・・ああ」



 短く返事を返すと、ランスロットは手に持っていた片手剣を謎の空間に突っ込むと、そこから身の丈以上の巨大で刺々しい大剣を取り出し、警戒しつつ前進した。

 フィオナは何やら大型の弓を取り出す。

 彼らの持つインベントリというスキルは空間魔法の一種で、大量のものを亜空間に収納できるスキルだ。手ぶらに近い軽装で、このようなダンジョンに長期間潜っていられるのも、すべてこのスキルのおかげだった。


 足音を消し、息をひそめ先に進むと、そこには一匹の魔物の影が見える。

 慣れた手つきで手信号を送るランスロット。幸いにも敵は背を見せている。


 声は出さない。

 長年、一緒に冒険者をやってきた彼らには、そんなことは必要ない。

 ランスロットが手で合図をし、標的に突っ込む。

 その瞬間、フィオナは炸裂系の矢を敵の前の壁に放つ。標的は壁の爆発に驚き、一瞬怯んだ。

 アルヴァインとエルザは詠唱を開始。エルザは【エアライド】、アルヴァインは【ストリーム】だ。



「【エアライド】」



 風の初級魔法であるエアライドの詠唱が先に完成し、ランスロットを加速させる。風を身に纏い、一気に標的にたどり着いたランスロットは【リュウノアギト】を豪快に敵に叩きつけた。

 ガギン!! と大きな音を立て、強烈な衝撃とアギトを形作る鋭い牙が襲い掛かる。強力な防御力を誇るストーンビーストだったが、それを上回る攻撃力が背中の甲殻の一部を粉砕した。



「Gurrrr・・・・Gaaaaaa!!」



 ストーンビーストは突然の出来事に唸り声をあげ、太くゴツゴツした腕を横薙ぎに振るった。

 ランスロットはすかさず大剣を斜めに構え、その破壊力を往なしながら横っ飛びにさらに威力を殺す。長年、巨大な魔獣の攻撃を受け続けた彼にとっては日常的な防御だ。そのまま距離をとったところで、アルヴァインの詠唱が完成する。



「【ストリーム】!!」


 

 アルヴァインの目の前に、大きな水の塊が出現し、そこからすさまじい圧力の水流が発生し、ストーンビーストに襲い掛かる。超高圧がかけられた水流は、ストーンビーストの甲殻さえも貫き、そのまま左前脚を貫いた。



「Gaaaaarrrrrrr!!!!」



 思わぬダメージにストーンビーストは水流の発生源、アルヴァインをにらみつけ、咆哮を浴びせる。



「ターゲット俺かよ!? やっべ!」



 強烈な魔力が乗った咆哮を受け、アルヴァインは体が硬直してしまう。

 ストーンビーストは怯んだ相手に止めを刺そうと、突進の体制をとるが、その腹の下にはフィオナがいた。

 いつの間にか弓を手放し、フィオナの手には色鮮やかな羽根飾りの付いた手甲が装着されている。



「いっくよー! 瞬身連撃!!」



 瞬間的に強烈な二連撃を腹に叩き込まれ、ストーンビーストは体の割には小さな目を見開いて、口から血液の塊を吐き出した。



「・・・臥竜天昇」



 腹に攻撃を叩き込まれて伸びきったその首に、ランスロットの必殺の一撃が叩き込まれる。


 ガキボキ・・・グチャッ・・・・・・・・


 甲殻やら骨やらが破壊される音とともに、ストーンビーストの首はへし折れ、周囲に潰れた肉の音が響いた。




「ふぅ、何とかなったな」


「にひひひひ! アルヴァイン、何か言う事があるんじゃないの~?」


「う・・・・・ クソッ・・・・ サンキュな、助かったよ、フィオナ」


「全く、咆哮なんてまともに浴びてるんじゃないわよ」


「エルザはエアライド一発撃っただけじゃねーかッ!」


「仕方ないじゃない。火魔法も風魔法も効きそうにないんだもの。下手に手を出してターゲットされても意味ないでしょ。 それに、ちゃんとあなたを治療できるようにポーションは用意してたのよ? その前に倒しちゃったから不要になったけど」


「もうちょっと補助魔法も覚えたらどうなんだ」


「風と光が使えれば十分でしょ? これ以上増やしてもスロットが足りなくなるわ」


「それはまぁ、仕方ないか。早くマスターしちまえよ」


「あんたには言われたくないわよ!」



【スロット】

 トランスレイスである彼らには、特殊機関、スロットが体のどこかに発現する。

 そのスロットにクリスタルを挿入することでクリスタルの力を使えるようになるのだ。

 そして、その力を使い続けた時、クリスタルを外しても使えるようになっている事がある。それがマスターするという事であった。 



「ほらほらぁ、二人とも、先行くよー!」


「・・・素材」


「そだねぇ。インベントリもまだ余裕あるし、牙が綺麗だから牙だけ取ってこうか」


「・・・了解」



 慣れた手つきで鋭く輝く牙を剥ぎ取る。

 これだけの大きさで、欠けることなく美しい牙は貴重品だ。命がけで戦えば、生命力あふれる巨大な獣は全身がボロボロになる。貴重な素材は貴重な武具の原材料となるのだ。



「それじゃ、奥に進もうぜ」






 それから数度の戦闘をこなし、一行がたどり着いた先は、一面の白い壁だった。



「なにこれ? 初めて見るよ~!?」


「ああ、俺もだ。エルザ、何かわかるか?」



「・・・私も初めて見るわね。ただ、ダンジョンの奥に・・・と考えると不自然極まりないのだけれど、どう見ても人工物ね」


「だな。なんでこんなものがってかんが



プシューーー!!



「って、何やってんだランスロット!!」


「…色々触ったら開いた」


「勝手に色々触るんじゃねーよ!! 罠だったらどうすんだ!」


「まったく、びっくりさせないでよね」


「どーする? とりあえず中行ってみようか?」



「・・・・・・そうだな、行ってみるか。ただし、警戒は最大限に、な」



 最も索敵能力の高いフィオナを先頭に、一行はかつて『宇宙船』だったものの中へと入っていくのだった。




 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




ランスロット達4人は、真っ白い壁の通路を進んでいた。



「見慣れない風景だけれど、モンスターもいないようね」


「ああ、今のところはな、だが油断はするなよ?」


「ねぇみんな。なんか行き止まりみたいだよ? 扉っぽい感じもするけど」


「おいランスロット。今度は勝手に触るなよ? もし罠だっt



プシューーーー!



「っておい!!またかよ!?」


「…いや、俺は触ってない」


「フィオナ!?」


「ぶーー! 私だって触ってないもん!」


「勝手に開いた?」



「中、何か光ってるわよ?」


「・・・・・・仕方ない、罠かもしれんが見てみるか」



 慎重に開いた扉へと侵入すると、そこは小さな部屋となっており、中央には大きな、そして横長な卵型のうっすらと、所々光る物が置いてあった。



「この部屋は・・・この謎の物体だけか。他に何か見つかったか?」


「いえ、他には何もないわね。これ、何かしら?」


「さぁ? さっぱりわかんねぇよ。大体洞窟の最深部にあるここは何なんだ?」

コンコン・・・


「これ、すっごく硬いよぉ?」


「あ、バカ! 勝手に触んな



プシュゥゥゥゥゥ・・・・・・・・



「って開いた!? もうヤダこの展開!!」


「見てみて! 中に人が居る!!」



「とりあえず離れろ!」


「動いたわよ! 気を付けて!!」



 すぐにアルヴァインとエルザが指示を出し、4人は素早く下がって様子を見る。



「・・・出てくるみたいだぞ」



 息をのむ四人。

 ゆっくりとその卵型の容器から身を出す謎の男。男は武器が無い事、攻撃の意思がない事を示すためなのか、両手を上にあげ立ち止まった。


 そして、こちらを向いて口を開いた。



「・・・あー、こんにちは。私、名前、アキラ。君たちに危険、ない。言葉、通じていますか?」



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