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第8話 皇帝

 

 宿を出ると、ひんやりと湿った空気が頬を撫でた。


 朝だ。

 ・・・いや、朝のはずだ。


 この国は本当に時間感覚が狂う。

 晴れているらしいのに空は薄暗く、見上げても巨木の枝葉しか見えない。太陽があるのかどうかすら怪しいレベルだ。


 だが、その薄暗さすら嫌じゃない。


 苔むした石畳。

 街灯の柔らかな明かり。

 霧に煙る巨木の幹。


 ファンタジーだ。


 マジでファンタジーだ。


 昨日も散々歩き回ったっていうのに、まだ普通にテンションが上がる。



「そんなにきょろきょろしてると、田舎者丸出しよ」



 隣を歩くエルザが、少し呆れたように言った。



「いや、だって凄いだろ。普通に歩いてるだけで雰囲気が良すぎる」


「アキラって、本当に変なところで感動するよねー」


「いやいや、感動するだろこれは。むしろしない方がおかしい」


「はは、分かるけどな。ま、俺は湿気が強すぎてあんまり長居したくねーけど」



 アルヴァインが肩をすくめる。



「そうね。見た目は綺麗だけど、ヒュームが住むにはちょっと湿度が高すぎるわ」


「・・・俺も苦手だ」



 ランスロットが短く同意した。


 なるほど。

 確かに見た目は最高だが、住環境として快適かと聞かれたら少し悩むな。


『気温十七・二度。湿度八十八%。アキラの感覚は概ね正しいかと』


 高っ。


 やっぱり数字で聞くと露骨だな。


 俺がそんな事を考えていると、フィオナがぴこぴこと耳を動かしながら笑った。



「私は結構平気だよー?」


「そりゃエルフとビーストのハーフだしな。先祖の適性があるんじゃねーの?」


「そういうもんなのかなー?」



 尻尾までぱたぱた揺れている。

 いや、可愛すぎるだろその反応。


 そんな軽口を交わしながらしばらく歩くと、前方の景色が少しずつ開けていった。


 そして、見えた。



「・・・おお」



 思わず声が漏れる。


 それは、俺が想像していた城とはまるで違っていた。


 高くそびえる尖塔も、豪奢な白亜の壁もない。

 あるのは、蔦と苔に覆われた巨大な石造建築だ。高さはせいぜい十メートルほどだろうか。だが低いから迫力が無いわけじゃない。むしろ逆だ。大地に根を張るような重さがある。


 屋上からは何本もの細い水路が壁面を伝い、滝のように流れ落ちている。

 流れた水は建物の周囲を巡る太い水路へと集まり、城全体を静かに囲っていた。


 城というより、古代遺跡。

 それも、まだ生きている遺跡だ。



「これが・・・城?」


「やっぱそう思うよな?」



 アルヴァインが苦笑した。



「いや、うん。もっとこう・・・王様が住んでそうなやつを想像してた」


「分かるわ。私も最初はそうだったもの」


「でも、なんか神秘的でいいよねー!」


「・・・神秘的というか、普通に異様だ」



 ランスロットの感想ももっともだ。


 その時、城の前に立っていた黒い影がこちらへ歩いてきた。


 全身を覆う黒甲冑。

 背には漆黒の剣。

 ただ歩いてくるだけなのに、妙な圧迫感がある。


 強い。


 説明抜きでそう分かった。

 理屈じゃない。昨日今日会った連中とは、明らかに格が違う。



「おはよう。ちゃんと朝起きられたようで何よりだ」



 黒騎士イアンは、見た目に反して穏やかな声でそう言った。



「お、おはようございます」


「街は見て回れたか? ヒュームには少し辛い土地だろう」


「ええ、まあ。エルフの皆さんは綺麗だし街の雰囲気も最高なんですけど、湿気はちょっと・・・」


「あー、それは分かる」



 思わず正直に答えると、イアンは少しだけ笑った。


 見た目があまりにも威圧的だから、普通に笑うだけでちょっとギャップが凄い。



「さて、陛下がお待ちだ。案内しよう」



 イアンに促され、俺たちは城へ向かう。


 だが、どうしても気になった。



「あの、一つ聞いてもいいですか」


「何だ?」


「この城、どうしてこんな・・・遺跡みたいな形なんです?」



 俺がそう聞くと、イアンは少しだけ城を振り返った。



「良い質問だ。君は昨日来たばかりだったな。ならば、知っておくのも悪くない」



 そしてイアンは、歩きながら語り始めた。



「この大陸では、はるか昔からビーストとエルフが争っていた。今でこそ共存しているが、かつては違った。身体能力ではビーストが圧倒的に上で、エルフは弱かった」



 エルフが、弱かった。


 正直少し意外だ。

 この国に来てから見た限り、エルフはどう見ても文明側、支配側に見えたからだ。



「ビーストの王家には『鷹の目』という上空からの索敵スキルが伝わっていてな。エルフはそれを避けるため、大樹の下に身を隠し、森の中で生き延びた。逃げながら、魔法を磨いたのだ」



 なるほど。


 だからこの国はこうなのか。


 巨木。

 薄暗さ。

 隠れるような街。

 目立たない建築。


 全部が生存戦略の名残ってわけだ。



「そして、およそ千年前。龍の血を浴びた勇者と、神託を受けた神官の間に一人の子が生まれた。ルイ=アル=ザウ=ルザリス。彼は圧倒的な魔力と龍に愛された力を持ち、散らばっていたエルフを纏め、一気に戦局を覆した」


「それがルザリス帝国・・・」


「そういうことだ」



 歴史の成り立ちを聞きながら、俺は改めて城を見る。


 古びて見えるのに、弱々しさは無い。

 むしろ、長い歴史そのものが圧になってのしかかってくるようだった。



「すげぇな・・・」


「何がだ?」


「いや、ちゃんと理由があるんだなって。見た目だけじゃなくて」


「当然だ。この国の形には、この国の記憶が刻まれている」



 イアンのその言葉は、少しだけ格好良すぎた。


 城門をくぐると、空気が変わった。


 ひんやりしているのに、不思議と冷たくはない。

 石と水と植物の匂いが混じり合い、どこか神殿に入ったような感覚になる。


 通路を歩くたびに、水の流れる音が小さく響いた。

 外から見た時も思ったが、この城は水を意図的に巡らせているらしい。


『温度と湿度の安定化には寄与している可能性があります』


 なるほど。

 少なくとも飾りだけって感じじゃないな。


 やがて俺たちは、大きな扉の前で止まった。



「ここから先が謁見の間だ。・・・固くなりすぎるなよ」



 イアンがそう言うが、無理である。


 皇帝だぞ皇帝。


 ギルド登録した翌日に会う相手じゃないだろ普通。


『心拍数上昇。呼吸も浅くなっています』


 うるさい。

 知ってる。


 扉が開かれる。


 広い。


 それが第一印象だった。


 白い石の床。

 高い天井。

 だが必要以上に装飾が多いわけではない。

 空間そのものが静かで、張り詰めていて、それだけで十分に威圧感がある。


 奥には玉座。

 そこに、一人の男が座っていた。


 長い白銀の髪。

 整いすぎている顔立ち。

 だが美しい、だけではない。生き物としての格が違う、とでも言うべき何かがあった。


 視線が合う。


 ヤバい。


 それが最初の感想だった。

 柔らかい雰囲気はある。だが、それで誤魔化せる類の相手じゃない。

 イアンを見た時とはまた違う、底の見えなさがあった。


 アルヴァインたちが跪いた。

 俺も慌ててそれに倣う。



「さて――余がルザリス帝国第五代皇帝、ルーク=ファラコル=ザウ=ルザリスである。イアンよ、護衛の任、ご苦労であった」



 重い。

 声が重い。


 空気がぴんと張る。



「ハッ、身に余るお言葉――」


「・・・ぷっ」



 え?


 今、誰か笑ったか?



「・・・あっはっはっはっは!」



 次の瞬間、玉座の上の皇帝が突然笑い出した。



「やっぱムリムリ! いやいや悪い悪い! 皇帝っぽくするのはガラじゃないね!」


「またそれですか・・・」



 エルザが小さく額を押さえた。



「前もそれで私たちを固まらせたでしょう」


「あー、やっぱり前にもやってたのか」


「やると思ってたけど、アキラの前でもやるとは思わなかったぜ」


「だって初対面だし、一回くらいはちゃんと皇帝っぽくしておきたくてさ」


「基準がわかんねーよ・・・」



 思わず心の中でアルヴァインに同意してしまう。


 なんなんだこの人。

 さっきまでの圧が嘘みたいじゃないか。


 だが、だからこそ逆に油断できない気もする。

 あれだけ空気を支配してから、一瞬で崩せるってことだ。



「楽にしてくれていいよ。僕は堅苦しいのがあまり好きじゃなくてね」



 皇帝――ルークは、玉座から降りながらそう言った。


 近くで見ると、さらに分かる。

 柔らかい。

 だが、それでいて底が見えない。


 気安く話していい相手に見えるのに、絶対に一線を越えてはいけない感じがある。

 それが余計に厄介だった。



「さて、君がアキラ=ジェイ=ラッシュバックだね?」


「は、はい」


「そんなに緊張しなくていい。・・・と言っても無理か。まあ、順番にいこう」



 そう言って、ルークは少し表情を引き締めた。



「まず聞きたいのは二つ。君自身のこと。そして、君が眠っていた遺跡のことだ」



 来た。

 ここが本番だ。


『事前方針を再確認します。具体的年数、出自の核心、AIの存在は秘匿』


 了解。


 俺は一度息を整え、できるだけ落ち着いて口を開いた。



「俺は・・・おそらく、遠い土地にいたのだと思います。研究施設に所属していた、というところまでは分かっています」


「おそらく?」


「記憶がかなり曖昧なんです。事故に巻き込まれて施設ごと転移し、地中に埋没しました。その時に重傷を負い、生命維持装置の中で長い眠りについていたようです」


「ようです、というのは?」


「正直、俺にも正確な部分は分かっていません。残っていた記録も、完全ではありませんでした」



 これは嘘ではない。

 全部を言っていないだけだ。


 ルークはじっと俺を見る。


 見透かしているのか、いないのか分からない。

 それが一番怖い。



「長い眠り、と言ったね。どれくらいだい?」



 そこか。

 やっぱりそこを聞くよな。



「・・・千年、前後かと」



 沈黙が落ちた。


 アルヴァインたちが小さく息を呑む気配がする。

 ルークは少しだけ目を細めた。



「なるほど。随分と長く眠ったものだ」



 あれ。

 思ったより騒がない。



「驚かないんですか?」


「驚いているさ。だが、古代遺跡と転移に関わる話なら、それくらいの異常はあり得なくもない。少なくとも、私はそう判断している」



 なるほど。

 この人、ただの為政者じゃないな。


 遺跡や超常現象に対して、最初から受け皿がある。



「次だ。あの遺跡は危険か?」


「現時点では断定できません。ただ、防衛的な機能があるかという意味なら、答えはノーです。けど、設備の安定性の意味なら、俺がいた区画はすでに大きく損壊していました。機能していない設備も多いです。安全は保証できません」


「他に、君のような者が眠っている可能性は?」


「・・・低いとは思いますが、ゼロとは言えません」



 ルークは頷いた。

 その横でイアンが口を開く。



「陛下。彼の言葉には、少なくとも即時の敵意は感じません」


「うん、僕もそう思う」



 良かった。

 少しは信じてもらえたらしい。



「それで、ここからは私の方の話をしよう」



 ルークはそう言って、近くの長椅子に座るよう促した。

 謁見というより、事情聴取と会談の中間みたいな空気だ。



「君はこの国の常識をほとんど知らない。だからこそ、少しだけ知っておいてもらいたい。この国は、今は平穏に見えても、遺跡や石碑、パンドラ絡みの異変が少しずつ増えている」


 石碑。

 パンドラ。


 また気になるワードが出てきた。



「先ほどイアンから、この国の成り立ちは少し聞いたか?」


「はい。エルフがビーストから逃れ、魔法を磨き、ルザリス帝国を築いたと」


「そう。だが、帝国よりも古いものがこの世界にはある。遺跡も石碑も、その多くが帝国成立以前のものだ。誰が何のために造ったのか、完全には分かっていない」



 古代文明の遺産、か。


 ファンタジーとしては王道だ。

 だが俺からすると、それだけじゃ済まない。


 もしかしたら、あれは本当に“前文明”なんかじゃない。

 俺たちと同系統の、何かかもしれない。


『仮説としては妥当です。ただし裏付け不足』


 うん。

 分かってる。


 分かってるけど、気になる。



「君の遺跡が、その謎とどう繋がっているのか。そこに私は興味がある。脅威であるなら把握しなければならないし、そうでないなら、むしろ君の知識は大きな価値になる」


「・・・つまり、俺を利用したい、と?」



 聞いた瞬間、アルヴァインたちが少しだけ緊張した気配がした。

 だがルークは否定しなかった。



「利用、という言い方は乱暴だが、本質的にはそうだね。ただし、こちらも一方的に奪うつもりはない。君に敵意がないのなら、私は君の保護者にもなれる」



 率直だ。

 率直すぎて逆に信用できる。


 それに、国家権力ってのはこういうものだ。

 曖昧な善意より、利害を言ってくれる方がよほど分かりやすい。



「君を無暗に拘束するつもりはない。ただし、定期的に報告してほしい。それが条件だ」


「・・・分かりました」



 ルークは満足そうに頷いた。



「よし。では当面の話をしよう。私はヒュームである君に、デア=グラントの様子を見てきて欲しいと思っている」


「様子?」


「なに、難しい事ではないよ。ぺドラメという港町からヴェルクハーフェンという街に船が出ている。それで向こうの大陸で暮らし、定期的に気づいた事を知らせてくれればいい」


「自由に過ごせ、と?」


「完全に自由ではないかな。冒険者として積極的に活動して欲しい」


(どう思う?)


『特に問題はないかと。この程度で皇帝との関係ができるなら、人脈上の大きなメリットになるでしょう』


(・・・だな)


「わかりました。お受けいたします」


「良かった! それじゃよろしく頼むよ。本当はイアンに動いてもらうべきだろうけど、やる事が多すぎてね」


「すまないな、アキラ」


「いえ、デア=グラントには俺も行ってみたいと思っていましたから」


「そう言ってくれると助かるよ。出発までは自由にしてくれ。ただ、船のスケジュールもあるから、三日以内には出発した方がいいかな。それまでは城下を見て回ってもいいし、魔法について学んでみてもいい。城の書庫も解放するよ。遺跡の件で何か思い出したなら、イアンかギルド経由で知らせてくれ。必要な便宜はある程度図ろう」


「ありがとうございます」


「それと、アキラ」


「はい」


「君は面白い。だが、自分の異常性を軽く見ない方がいい」



 その一言だけ、少し重かった。



「君の中には、この世界の常識から大きく外れたものがいくつもある。君自身がそれを理解していないのが、今は一番危うい」



 図星だ。


 俺は、自分のヤバさをまだちゃんと把握できていない。


 魔力値だってそうだし、体の中の未知物質もそうだ。

 AIとジェイクの技術も、この世界から見れば十分に異常だろう。


「陛下」


 アルヴァインが口を開いた。


「恐れながら申し上げます」


「ああ、君もかしこまらないで楽にしていいよ」


「では失礼します。アキラに関してなのですが、ギルドでの魔力措定の際、測定用の水晶が割れる、という事態が発生しました」


「なるほど。それじゃアキラは少なくとも1000以上の魔力持ちなんだね」


「おそらくは」


「ま、それ自体はないわけじゃないよ。Aランクの連中や、当然ながらSランクは皆壊してきたからさ。イアン。城の奴、持ってきてくれる?」


「承知しました」


 そういって出ていくイアン。



 しばらくして持ってきた水晶に手をかざすと・・・


パリ───ン!


「「「「!?」」」」


「あちゃー。これでこれを壊したのは4人目だね」


「え、他にも壊した方がいるのですか?」


「この水晶の測定値は30000・・・らしい。正確な所はわからないけど、イアンの28000は量れていたからね」


「「「「28000!?」」」」


 アルヴァインたち四人は、目玉が飛び出そうなくらい驚いている。

そりゃそうだろう。

なん百とか言ってた世界から桁が二つ飛んだ。



「ま、少なくともアキラはそれ以上ってことだね


「意味が分かりません・・・」


 エルザは苦笑いだ。


「で、これを壊した記録があるのは、初代、四人の師匠レイナ―ド・・・そして余だ」


「陛下が・・・」


「ってか師匠もやっぱすごいねー」


「ま、白龍の血がそうさせるのだろうけどね。そんなわけで、アキラは異常だ。それは十分に自覚しておいてくれ」


「肝に銘じます」


「うん。ならいい」



 ルークはそこでふっと表情を緩めた。



「固い話はここまでにしよう。それじゃ、レグリスでの時間を、好きに使うといい。あ、そうそう、このペンダントを持っていてくれ。私が保護者だって証になるから」



 そこで謁見は終わった。


 俺たちは立ち上がり、礼をして、謁見の間を辞した。

 

 ルークからもらったペンダントを見る。

 素材は・・・なんだろうな。



『組成不明。調査を開始します』



 それにしても、白竜が金色に輝く宝石を咥えている。

 なんとも神々しい。

 しかし、他人は見られないようにした方がよさそうだな・・・



 謁見の間から外へ出た瞬間、ようやく肺に溜まっていたものを吐き出すように息をつく。



「・・・つ、疲れた・・・」


「そりゃそうでしょ」



 エルザが半ば呆れ、半ば同情するように言った。



「相変わらずだったねー!」


「だな。もう一回やるとは思わなかったぜ」


「ちょっと芝居が長かったけどね」


「・・・いや、十分すぎるほど印象には残った」



 俺がそう言うと、フィオナが楽しそうに笑った。



「でも、アキラが変に疑われなくてよかったよね!」


「そうね。もっと面倒な話になるかと思っていたけれど、思ったよりずっと穏当だったわ」


「昔からああいう人なんだ」



 イアンが、少しだけ笑った。



「あれでも一応、気を遣っているつもりらしい」


「いや、気の遣い方が独特すぎるだろ・・・」


「否定はしない」



 その返答に、少しだけ場が和む。



「それにしても、アキラの魔力ってすごいんだねー。道理で私が狙われたわけだよ」


「だな。凄すぎて意味が分からなかったぜ」


「ええ、ほんと。でも、魔法が使えないなんてもったいないわね」


「生活魔法から練習してみるといいぜ。あれはクリスタルが無くてもできるからな」


「そうね、勉強してみるといいわ。ただし、やるなら制御はしっかりね」


「ああ、試してみたいな」



 そんな話をしているうちに、城の外へつながる門にたどり着く。

 城を出ると、湿った風がまた肌を撫でた。


 さっきよりも、その空気が少しだけ現実味を持って感じられる。

 ただの綺麗な異世界じゃない。

 歴史があって、国家があって、皇帝がいて、その中に俺は今いるのだ。


『今後の行動方針を提案します。自由時間を利用し、研究再開、魔法観察、素材収集を推奨します』



 来たな。

 だがまあ、その提案には全面的に同意だ。


 皇帝に会った。

 この国の歴史も少し知った。

 そして三日以内と短いが、レグリスでの自由時間を貰った。


 なら、やることは一つだ。


 魔法と、この世界そのものを、徹底的に調べる。



 ・・・異世界、やっぱり忙しすぎる。

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