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013 竜

 昼下がりの焔艶灯火は相変わらず客が少なかった。


「獅子架が食べてる分が売り上げのほとんどなんじゃないかと疑うときがある」

「なにそれ」

「お前が食べすぎな件について憂いてる」

「うっさいー」


 本日は珍しく一階の角席。椅子に座った獅子架の膝の上では、小竜が気持ち良さそうに目を細めて丸くなっている。それを撫でる少女は、自然と反撃の声も控えめになっていた。食べたケーキの量は控えめではないけれど。

 店で飼われている小竜は、撫でられあきたのか、一声鳴いてから離れていった。


「しかし竜がいる喫茶店ていうのはどうなんだ」

「どらごんかふぇ」

「竜と触れあえる素敵空間とでも言うつもりか」


 獅子架は撫でていた興奮さめやらぬ様子で真剣に頷き返してくる。


「そんなに竜が好きか」

「うん。『竜は浪漫』っておじさんが言ってた」

「おじさんって誰だよ……」


 影飢にはそんなことを語る人物に心当たりがなかった。思い当たったとしても、そんなことを小さな女の子に聞かせる中年はちょっとアレな人に決まっている。思い出したくもない。


「まあいい。竜が好きなら凄い竜に会いに行かないか」

「!?」


 凄い竜というワードに少女が目を輝かせた。


「長老竜とお前がじゃれてる間に、俺はお宝を回収したい」

「…………うん?」


 小さなテーブルを挟んだ向こうで少女は小首を傾げる。


「大丈夫。お前なら長老竜なんて余裕だ」

「よゆー……?」

「危なくない。お宝がいっぱい。ケーキもいっぱい食べられるぞ」


 少女はじーっと影飢を見つめたまま動かない。


「……す、凄い竜に会いたいだろ?」

「だまそうとしてるでしょ」

「ち、さすがに無理があったか」


 視線を逸らして落ち込む影飢の前で、獅子架は空中投影した画面を操作する。


「なにをしてますので獅子架さん?」

「ネットで長老竜の画像調べてる」


 ガタッ――と、椅子を鳴らして影飢は席を立った。


「…………」


 画面を見て硬直している少女を横に、会計を済ませて外へ出ようと試みる。


「こ、こんな怖いのと会いたいわけないよ!? ちょっと影飢! 私になにさせようとしてたの! 怒るよ泣くよ馬鹿ばかバカ――、ああもう逃げるなっ。斬る! 刻む!」


 獅子架の叫びを背に、影飢は全力で逃げ出した。

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