7話 新領地に到着した途端、地元の悪徳商会が「前領主への賄賂」をチラつかせて脅してきた。だが、街道でボルドー男爵が滅ぼされたニュースが届いた瞬間の顔が傑作だった
街道でのボルドー男爵の一件を片付け、俺とエルザを乗せた馬車は、ついに新たな領地である辺境の都市へと到着した。
前領主の圧政のせいで、領民たちは飢え、街は荒れ果てていると聞いていたが――出迎えた領主館の応接室で、ふんぞり返って俺を待っていたのは、金ピカの指輪をいくつもはめた肥満体の男、『ギルバート商会』の会頭だった。
「いやあ、新しい領主様がこんなお若い方だとは! 私はこの街の経済を牛耳るギルバートです。前の領主様とは、毎月『金貨二百枚』の裏金でうまくやらせていただきましてねえ……。まあ、若い貴方にも、大人の世界のルールを教えて差し上げましょう」
ギルバートは下卑た笑みを浮かべ、机の上に金の詰まった袋をドスンと置いた。
要するに、「俺の不正を黙認して裏金を受け取るか、それともこの街の経済を干されて破滅するか選べ」という、新任の俺に対する明確な脅迫だった。
俺の『SSS級・絶対支配』の権能が、この男が裏でどれだけの領民を騙し、暴利を貪ってきたかの不具合を瞬時にすべて検知する。
「断ると言ったら?」
俺が冷淡に言い放つと、ギルバートは顔を険しくし、周囲に控えていた数人の護衛の荒くれ者たちに目配せをした。
「ほう、若造が粋がるなよ? ここは王都じゃない、私の息がかかった街だ。事故に見せかけてあんたを消すことくらい――」
その時、応接室の扉がバンッ!!!と勢いよく開き、ギルバートの部下が血相を変えて飛び込んできた。
「か、会頭! 大変です! 今、王都からの街道の伝言が入りました! あのボルドー男爵の領地が、昨日付で完全に『消滅』しました!!」
「……は? 何を言っている。男爵が失脚しただと?」
ギルバートが眉をひそめる。部下はガタガタと震えながら、俺を指差して絶叫した。
「違うんです! 男爵の私兵団を瞬時に無力化し、国家反逆罪で爵位と財産をその場で一瞬にして全没収した御方がいるんです! その御方こそが、一昨日、王都で数千のゴブリンを指先一つで消滅させた新領主――目の前にいらっしゃる、レイ辺境伯様です!!」
「な……、なんだと……!?」
ギルバートの顔から、一瞬にして血の気が引いた。
ボルドー男爵といえば、この辺りでは誰も逆らえない大貴族だ。それを、街道の立ち話程度の時間で合法的に叩き潰した存在が、今、自分の目の前で冷たい目をしている。
「大人のルール、だったか。じゃあ俺のルールを教えてやる」
俺が静かに右手をかざすと、部屋の空間全体の重力が数倍に跳ね上がったかのような風圧が吹き荒れた。ギルバートも、その護衛たちも、あまりのプレッシャーに息ができず、床にへたり込んでガタガタと震え出す。
「ギルバート商会、お前たちのこれまでの不正、脱税、奴隷売買の証拠はすべて俺の権能で割れている。本日をもって商会は取り潰し、全財産は没収して領民の救済に充てる。逆らうなら、ボルドー男爵より悲惨な目に遭うと思え」
「ひ、ひぃぃぃっ! お許しを! 財産はすべて差し上げます! だから命だけは、命だけはお助けくださいレイ様ぁーっ!!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして、床に額を何度も叩きつけるギルバート。
俺はその横を通り過ぎ、領主館の窓から、飢えた顔でこちらを見上げている領民たちを見下ろした。
「ふふ、レイ様。これでこの街の膿はすべて消えましたね。これからは、貴方様がこの地を支配する真の主です」
エルザが背後から俺の首にそっと腕を回し、熱い吐息を漏らす。
俺を裏切った世界が、俺の圧倒的な力にひれ伏していく悲鳴を聞きながら、俺とエルザの、この新領地での絶対的な支配は、ここから本格的に始まっていくのだった。




