6話 王都を救った翌日、最高顧問の俺は新領地へ。道中で立ち塞がった悪徳貴族が「通行税に金貨百枚か、その聖女を置いていけ」と脅してきたが、国王の特使が駆け込んできた時の顔が傑作だった
国を滅ぼしかねなかったゴブリンの大群を、指先一つで消滅させた翌日。
王都は、俺を『本物の神』と崇める何万人もの住人たちの歓声で、地鳴りのように揺れていた。
ギルマスのガロンは「歴史がひっくり返った……」と腰を抜かしたまま放心し、俺の漆黒の魔導外套コートを調整してくれた職人のグロムは「とんでもねえ化け物の服を作っちまった」と大泣きして喜んでいた。
完全に心が折れ、恐怖で失禁したアランとミリーが、兵士たちに引きずられて二度と這い上がれない底辺へと連行されていくのを一瞥すら動じず、俺はエルザを連れて、国王陛下から直々に授与された新領地へと向かう馬車に乗った。
――そして、王都を発って数時間が経った、のどかな街道でのことだ。
ガシャーン!!と派手な音を立てて、俺たちの豪華な馬車の前に、武装した私兵団と、肥え太った成金趣味の貴族が立ち塞がった。この地方を牛耳る領主、ボルドー男爵だ。
「おい、待ちやがれ! この地を通るなら、通行税として金貨百枚を置いていけ! 払えないなら、その極上の聖女と馬車をここに置いて命だけ置いていくんだな!」
ボルドー男爵は、隣に座るエルザの圧倒的な美貌に下卑た視線を送りながら、下品にゲラゲラと笑った。
どうやら、王都で俺がゴブリンの大群を一瞬で消滅させたという大ニュースは、この辺境の田舎貴族まではまだ届いていないらしい。
俺の『SSS級・絶対支配』の権能が、目の前の私兵たちの強さを瞬時に弾き出す。全員、ただのナマクラだ。
「おい、無能そうなガキ。聞いてんのか?」
ボルドー男爵が俺の胸ぐらを掴もうと、汚い手を伸ばしてきた。
その瞬間。
ピキィィィィィン……!
エルザの放った凄まじい神聖魔力のプレッシャーが、周囲の空気を物理的に押し潰した。ボルドー男爵とその私兵たちは、あまりの恐怖にその場にガタガタと崩れ落ち、泥まみれの大地に這いつくばる。
「我が主、レイ様にその汚い手を触れようとするなど……万死に値しますよ、羽虫が」
エルザの冷徹な声に、男爵は泡を吹きながら恐怖に震えている。
そこへ、王都の方角から「待て! 待ってくれボルドー男爵!!」と、馬を限界まで激走させた国王直属の伝令騎士が、顔面を蒼白にして飛び込んできた。
「バ、バカ者! お前は一体誰に向かって武器を向けているんだ! その御方は、昨日たった一人で数千のゴブリン軍勢を消滅させ、国王陛下から『国家最高顧問・兼・辺境伯』の爵位を授与された、生ける伝説レイ様だぞ!!」
「……は? へ、辺境伯……? 数千の軍勢を、一人で……?」
男爵が泥まみれの顔を上げて俺を見た瞬間、顔面が完全に土気色に変わった。
自分が、国を滅ぼせるレベルの神のような存在に、通行税だの女を置いていけだの、命知らずな脅しをかけていたことにようやく気づいたのだ。
「ご名答。新領主である俺の馬車を襲撃した罪は重い。お前の爵位は剥奪、全財産は没収だ。陛下には俺から直接伝えておく」
「そ、そんな……! お許しを! お許しくださいレイ様ーっ!!」
泣き叫び、泥を舐めながら許しを請う悪徳貴族を私兵ごと踏みつけ、俺たちの馬車は再び静かに走り出す。
「ふふ、今夜も小気味良いゴミ掃除でしたね、レイ様」
エルザが俺の腕に嬉しそうに抱きついてくる。
「ああ。これからは俺たちの領地だ。邪魔な障害は、すべて排除していこう」
俺を怒らせた愚か者が、自分の過ちに気づいて絶望のどん底に落ちる悲鳴を背にしながら、俺とエルザの、新しい『絶対支配の領域』の拡大は、これからもどこまでも続いていく。




