5話 元勇者を壊滅させた『ゴブリンの大群』が王都へ襲来。怯える冒険者たちを横目に、最高顧問の俺が散歩がてら一瞬で消滅させてしまう
ウゥゥゥゥゥゥン――!!!
王都の空に、これまでに聞いたこともないような不気味な警戒街鐘が鳴り響いた。
「緊急事態だ! 王都の正門に、アランたち勇者パーティーを全滅寸前まで追い込んだ『ジェネラルゴブリン』率いる数千の大群が迫っている! 動ける冒険者は全員、正門へ集結せよ!!」
ギルド内に職員の悲鳴のような怒号が響き渡る。
さっきまで色めき立っていた冒険者たちの顔が、一瞬で絶望に染まった。元S級のギルマス・ガロンでさえ、険しい表情で奥から飛び出してくる。
「数千だと……!? クソッ、王都の防衛騎士団が遠征しているこの最悪なタイミングで……!」
ギルド内がパニックに陥り、誰もが死を覚悟して震える中、俺はゆっくりとソファから立ち上がった。
グロムに調整してもらった最高顧問用の漆黒の魔導外套をなびかせ、隣に立つエルザに声をかける。
「エルザ、ちょっと外の空気を吸いに行こうか。ちょうどいい散歩コースだ」
「はい、レイ様。お供いたします」
エルザは怯えるどころか、俺の側にいられる喜びで頬を染め、うっとりと微笑んでいる。
「お、おいレイ様!? どこに行く気だ! 正門の外は地獄だぞ!」
ガロンが驚愕の声を上げるのを無視し、俺たちは静かに、しかし圧倒的な存在感を放ちながら正門へと向かった。
王都の巨大な正門の外。
そこには、地平線を埋め尽くすほどのドス黒いゴブリンの軍勢が押し寄せていた。前線で怯えながら武器を構える王都の兵士たちの後ろで、ボロボロになったアランとミリーが腰を抜かしてガタガタと震えている。
「ひぃっ、来るな……! 来るなァ!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたアランが、情けなく叫ぶ。
その絶望の最前線へ、俺とエルザは足音も立てずに歩み出た。
「おい、見ろ……ギルドの新しい最高顧問、レイ様だ!」
「まさか、あの二人だけで数千の軍勢を止める気か……!?」
壁の上の避難民や兵士たちから、息を呑むような視線が集まる。
「ハ、ハハッ! 馬鹿が、死ににいきやがった!」
へたり込んだアランが、狂ったように嘲笑した。
「いくら聖女が強くたって、あの数を相手に勝てるわけがない! ざまぁみろ、俺たちを見捨てたバチが当たったんだ!」
ミリーも「そうよ、あの数に勝てる人間なんてこの世にいないわ!」と悲鳴を上げる。
俺は彼らの負け犬の遠吠えを一瞥すら動じず、ただ静かに軍勢に向かって右手をかざした。
神の権能『SSS級・絶対支配』を発動する。
(命令する。我が領域に踏み入る全ての敵対者よ――塵に還れ)
パチン、と指先を一つ、軽く鳴らした。
ドンッッッッッ!!!!
次の瞬間、世界の法則そのものが書き換わったかのような、空間を揺るがす絶対的な波動が放たれた。
不可視の圧力が地平線の果てまで一瞬で走り抜け――次の刹那、数千匹のゴブリンの軍勢が、その中心にいた巨大なジェネラルゴブリンも含めて、肉体の一片すら残さず「黒い塵」へと変わってサラサラと風に消えていった。
静寂。
さっきまで大地を揺るがしていた軍勢の足音が、嘘のように消え去っていた。
「……は?」
アランの口から、間抜けな声が漏れる。
王都の兵士も、避難していた何万人の群衆も、何が起きたのか理解できず、完全に石のように固まっていた。
指先一つ。たった1秒で、国を滅ぼしかねない大軍が完全に消滅したのだ。
やがて、壁の上から地鳴りのような大歓声が沸き起こった。
「消えた……!? ゴブリンの軍勢が一瞬で消えたぞ!!」
「神だ……レイ様は本物の神様だ!!」
「俺たちは、神に救われたんだ!!」
何万人もの人間が、俺に向かって地響きのような感謝の声を上げ、涙を流してその場に跪き、崇め奉り始める。
「そんな……バカな……あり得ない……」
アランは完全に心を折られ、自分の股間が恐怖で濡れていくのにも気づかず、虚ろな目で地面を見つめていた。ミリーも失禁せんばかりにガタガタと震え、二度と俺の顔を見ることすらできなくなっていた。
「さすがはレイ様。世界を支配するに足る、至高の御力です」
エルザが至福の表情で俺の右手をとり、その手の甲に深く、誓いのキスを捧げた。
明日の【18:00】に6話を更新します




