4話 「ひょろいガキに売る武器はねえ」と門前払いしてきた伝説の鍛冶師、俺が剣の欠陥を秒で見抜くと涙目で跪く
「レイ様、次はどちらへ向かわれますか?」
隣を歩く聖女エルザが、俺の腕にそっと自分の腕を絡めながら、潤んだ瞳で問いかけてきた。
「ああ、エルザ。最高顧問になったことだし、君に相応しい杖と、俺の護身用の武器を新調しようと思ってね。街一番の職人のところへ行こう」
俺たちは、王都の路地裏にある、煤けた看板の店『鉄の雷撃亭』を訪れた。
そこには、王族やS級冒険者の武器も手掛けるという、王都一の偏屈で知られる伝説のドワーフ職人、グロムがいた。
店に入るなり、火花の散る熱気と共に、低い怒鳴り声が飛んできた。
「……ケッ。最高顧問だか何だか知らねえが、ひょろいガキと、女連れの道楽者に売る武器はねえ。そこらの安物屋へでも行きな!」
金床をハンマーで叩きながら、グロムはこちらを見向きもせずに言い放った。
伝説の職人としてのプライドがあるのか、ギルドマスターに頭を下げさせた俺の噂を聞いても、なお態度を崩さない。
エルザが不快そうに眉をひそめ、黄金の魔力を指先に宿らせようとしたが、俺はそれを手で制した。
「グロム、その剣……中心核の魔力伝導率がコンマ数ミリ、右にズレているぞ。そのままだと、次の実戦で強い衝撃を受けた瞬間に砕け散る」
俺の言葉に、グロムのハンマーがピタリと止まった。
彼は顔を真っ赤にして、こちらを睨みつける。
「何を抜かしやがる、小僧! これは俺が三日三晩寝ずに叩き上げた、伝説の魔剣のレプリカだぞ! 傷一つ、欠陥一つあるはずがねえ!」
「なら、試してみるか」
俺は『絶対支配』の力を指先に込め、グロムが持っていた剣の峰を、軽くパチンと弾いた。
パキィィィィィィィィン!!
美しい音と共に、剣の表面にみるみるうちに無数の亀裂が走り、グロムの手の中で剣はボロボロと崩れ落ちた。その断面には、俺が指摘した通りの「魔力伝導のムラ」による結晶の歪みが露わになっていた。
「な……バカな……。俺ですら、実際に魔力を通すまで気づかなかった欠陥を……指先一つで……!?」
グロムは、崩れ落ちた剣の破片を呆然と見つめ、ガタガタと震え出した。
世界最高の職人として積み上げてきたプライドが、俺の『絶対支配』という神の権能の前に、文字通り粉々に粉砕されたのだ。
「あんたの腕は悪くない。だが、俺の目にはすべてが透けて見える。……やり直す気があるなら、手伝おうか?」
「お……おおお……」
グロムは突然、その場に崩れ落ちるように跪いた。
そして、涙を流しながら、俺の靴に額を擦り付けるようにして叫んだ。
「お、お師匠と呼ばせてください!! 貴方様のような真理に到達した御方、生まれて初めてお目にかかりました! お願いです、俺に、真の鍛冶を教えてください!!」
王都一の頑固者が、文字通り俺の足元でひれ伏していた。
「レイ様、さすがです……。武力だけでなく、技術の真髄までをも支配しておられるのですね」
エルザがうっとりとした表情で俺を見つめる。
店を覗き込んでいた通りすがりの冒険者たちも、あの伝説の職人が跪く姿に、腰を抜かさんばかりに驚愕していた。




