第27話:監視者の力
銃声の余韻がまだ部屋に残る中、監視者はわずかに首を傾げた。
外套の裂け目から覗いた肌は――肌とは呼べない、黒い金属のような質感だった。
「……やはり、人間じゃないのか」
俺の言葉に、監視者は無表情のまま応じる。
「人間だった時代もあった。だが不要な部分は捨てた。
使命を果たすために、肉体を最適化したまでだ」
その声には感情の揺らぎが一切ない。
まるでプログラムが言葉を吐き出しているようだった。
《フッ……笑わせる。肉体を捨ててまで縋る使命か。哀れな欠陥品だ》
影が嘲笑を浴びせる。
監視者の目が鋭く光った。
「欠陥……? 違うな。私は“完成形”だ」
言葉と同時に、彼の腕が変形した。
金属が軋み、皮膚が剥がれ落ちるようにして姿を変える。
やがてそれは、鋭利な刃を備えた兵器のような腕となった。
エリスが息を呑む。
「……強化兵……?」
監視者は一歩踏み出し、床を踏み砕いた。
「私は監視者。影を抑制し、人類の均衡を守るために存在する。
そのためにお前のような“器”は排除しなければならない」
俺の胸に怒りと恐怖が同時に込み上げる。
鎖を軋ませ、全身に力を込めた。
「ふざけるな……! 勝手に作って、勝手に怪物扱いかよ……!」
《解放しろ。今こそ俺の力を使え》
影が囁く。
《あの人形を砕けるのは俺たちだけだ》
監視者の刃が振り上げられる。
その一撃はためらいなく俺を貫こうとしていた。
だが次の瞬間、鎖がはじけ飛んだ。
俺の身体から噴き出した異形の力が、鉄を焼き切ったのだ。
「……ッ!」
解放された腕が赤黒いオーラに包まれる。
「来いよ……監視者」
俺は歯を食いしばり、刃を向けるその男に立ち向かった。




