第25話:監視者の告白
鎖に縛られたまま、俺は視線を向けた。
監視者――黒い外套の男は、ゆっくりと歩み寄る。
その足音は無機質で、まるで機械が刻むリズムのようだった。
「ようやく会えたな、宿主」
低い声が響く。
その瞳は氷のように冷たく、何一つ人間的な温度を感じさせない。
「……何者だ……お前」
男はわずかに口角を歪めた。
「名など不要だ。ただ、“監視者”と呼ばれてきた」
《名前も捨てたか。哀れな人形だ》
影が俺の内側で嗤う。
「お前たち“影”は、本来なら存在してはならない」
監視者は言葉を重ねる。
「だが人はそれを利用しようとした。
力を兵器に変え、制御できると信じた」
「……兵器……?」
「そうだ。お前がいま纏うその異形の力――
それは人間が作り出した。自然の怪異ではない」
頭が揺れる。
ずっと“影”は未知の存在だと思っていた。
だが、そうではなかった。
「管理局……奴らがやったのか」
監視者は首を横に振る。
「管理局は“後始末”を担っているだけだ。
本当の起源は――もっと古い研究機関にある」
その言葉に、エリスがわずかに目を伏せた。
彼女は知っていたのか?
「……なぜ俺なんだ……なぜ俺がこんな目に」
監視者の瞳が鈍く光る。
「偶然ではない。お前は――最初から選ばれていた」
鎖が軋む。
心臓が早鐘を打ち、息が詰まる。
「選ばれて……?」
「そうだ。お前の身体には、“影”を最も安定して受け入れる素質があった」
監視者は冷酷に告げた。
「言うなれば、お前は成功例だ」
沈黙。
影が内側で嗤い声を響かせる。
《聞いたか? お前は“人間”じゃない。最初から俺たちの器だったんだ》
「……嘘だ……」
否定した声は震えていた。
監視者の影が長く伸び、俺の足元を覆う。
「真実はひとつだ。お前は、人間であることを諦めるか――怪物として生きるか」
その宣告は、冷たい刃のように突き刺さった。




