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第23話:休息の罠



「ここなら、しばらくは安全よ」

エリスが案内したのは、街外れの古びたアパートだった。

外観はひどくみすぼらしいが、内部は意外にも整理され、最低限の生活物資がそろっている。


俺はベッドに腰を下ろし、深く息を吐いた。

ここ数日の逃走と戦闘で、心も体も限界に近い。


「……眠れそうかしら」

エリスが水の入ったコップを差し出す。

透明な液体が月明かりに揺れ、妙に不安を煽った。


「……ああ。少しだけな」

受け取ったコップを口に運びかけて、ふと手が止まる。

――本当に水か?


頭の中で疑念がよぎる。

だが、彼女の疲れ切った表情を見た瞬間、それ以上は考えるのをやめた。

乾いた喉に冷たい水が流れ込む。


「……エリス、お前……」

声をかけようとしたとき、不意にまぶたが重くなった。


「……なんだ……これ……?」


視界が揺れる。

全身に力が入らず、ベッドに崩れ落ちた。


「ごめんなさい」

かすかに聞こえたエリスの声。

それが最後だった。


――闇に引きずり込まれる感覚。


薄れゆく意識の中で、影の囁きが耳元で笑った。

《ほら見ろ。信じた罰だ》


闇に落ちていく俺を、誰かが見下ろしていた。

その視線は冷たく、計算されたものだった。






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