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第22話:監視者の影



夜の街は静まり返っていた。

戦闘の痕跡が残る地下から出たとき、外の空気は皮肉なほど澄んでいる。

冷たい風が頬を撫で、血の匂いを洗い流していった。


「今夜はここまで。休まなければ、持たないわ」

エリスが低い声で言う。

俺は黙って頷いたが、胸の中のざわめきは収まらない。


――誰が俺を“こうした”のか。

――エリスは何を隠しているのか。


答えのない問いが頭を巡る。


その頃。


高層ビルの屋上、闇に紛れて一人の影が双眼鏡を下ろした。

風に揺れる黒い外套。

耳に掛けられた通信機から、無機質な声が流れる。


『状況を報告しろ』


「……宿主は生存。暴走の兆候、顕著。だが制御の可能性も確認」


短く告げる声は、冷たく感情を排していた。

その瞳には、ただ獲物を観察する冷徹な光。


『エリスはどうだ』


「依然として対象に同行。……だが情に流されている」


沈黙が一瞬。

通信の向こうの声が、低く囁く。


『ならば切り捨てろ。観測対象はただ一人だ』


屋上の影は小さく頷き、夜空を見上げた。

月光に照らされたその瞳は、まるで人ではないように鈍く光っていた。


「……始まりは近い」


街を見下ろすその声は、冷酷な宣告のように響いた。



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