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第19話:エリスの決断



「やめなさいッ!」


エリスの叫びが、血煙に包まれた地下を震わせた。

だが、俺の耳には届かない。

影の声が頭の奥を支配し、眼前のすべてを敵として映し出していた。


《殺せ。すべて殺せ。裏切りも、恐怖も、未来も――》


俺は吠え、黒い腕を振り抜いた。

鉄壁のような壁が容易く裂け、爆発的な衝撃波が走る。

兵士たちはもはや戦う気力を失い、逃げ惑うだけだった。


「……これ以上は……!」


エリスの瞳に、ためらいが浮かぶ。

その手に握られた銃口が、俺に向けられる。


「止めなければ……あなたは完全に“影”になる」


一瞬、銃口の冷たい光が見えた。

その刹那、胸の奥でわずかな恐怖が蘇る。

――撃たれる。

――殺される。


《殺せ! 撃たれる前に!》


影の叫びが体を突き動かす。

俺の爪がエリスへと向かった。


「やめろォォォッ!!」


必死に抗った瞬間、爪先が床を抉り、火花を散らした。

俺の意思と影の衝動がせめぎ合い、体は震える。


「まだ……戻れるはずよ……!」

エリスは銃を下げずに叫んだ。

「あなたがここで完全に飲まれたら、全部が終わる! ――だから私が、止める!」


引き金にかかる指が震える。

殺すのか、救うのか。

その決断が、彼女自身の未来すら変えてしまう。


「……頼む……俺を……撃つな……!」

血に濡れた喉から、かすかな声が漏れた。


一瞬、エリスの瞳が揺らぐ。

だがその直後、銃声が地下に轟いた――。



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