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第15話:力の条件



エリスの言葉は、地下室の冷気よりも鋭く心を突き刺した。

「あなたを利用する」

その響きは、あまりにもあからさまな宣告だった。


「……利用、だと?」


俺の声は震えていた。怒りか、恐怖か、自分でも分からない。


エリスは落ち着き払った表情のまま、机の上の書類を差し出した。

そこには人体の図、そして“影”と名付けられた黒い斑点が人間の中に広がっていく様子が描かれていた。


「影は進行する。拒絶すれば暴走し、やがてあなた自身を喰い潰す。

 でも、受け入れれば……制御できる」


「制御……できる、だと?」


「そう。ただし条件がある」


エリスはモニターに映された映像を指差した。

そこには、管理局の研究施設。

白衣を着た研究員たちが、透明なカプセルの中で蠢く影を観察している。


「条件とは……管理局を潰すこと」


俺は言葉を失った。

あまりにも唐突で、危険すぎる取引。


「待て……! お前の言うことを信じろってのか?

 俺が力を使えば、また……人を殺すかもしれないんだぞ!」


怒鳴る俺を、エリスは冷たい眼差しで見据えた。


「もう殺している」


「……っ!」


「罪からは逃げられない。だからせめて、“敵”を選べ」


喉が詰まり、言葉が出ない。

選べ――その一言が胸に突き刺さる。


影の声が、頭の奥で甘く囁いた。


《選べ。敵を殺すために生きるか、ただの獲物として死ぬか》


揺れる視界の中で、エリスの手が再び差し出された。

救いの手か、それとも鎖か。


俺は――まだ答えを出せなかった。





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