第14話:協力者か傀儡か
重い鉄扉を抜けると、そこは地下へと続く長い通路だった。
湿った空気が漂い、遠くで機械の低い唸りが響いている。
案内するフードの人物は一度も振り返らない。
「……ここは?」
「安全な場所。少なくとも、管理局の目は届かない」
やがて辿り着いたのは、薄暗い地下室だった。
壁一面に並ぶ古びた端末、散乱した書類、そして無数のモニター。
その画面には、街中の監視カメラ映像が映し出されていた。
「まさか……お前、管理局の……」
「違う。彼らに敵対する者だ。だが、完全な味方とも言えない」
フードを外したその顔は、意外にも若かった。
まだ二十代ほどの女。鋭い眼差しが、俺を射抜く。
「……君は何者だ?」
「私の名は《エリス》。管理局の“影”研究から逃げた者」
その言葉に、胸の奥がざわつく。
影の研究――つまり、俺のこの身体に関わる何かを知っている。
「影ってのは……何なんだ。俺の中にいる、あの声は……」
エリスはしばらく黙り、やがて口を開いた。
「影は、人間の深層に棲みつく“異質な存在”。
本来は眠っているはずのそれを、管理局が人工的に呼び覚ました。
――あなたもその被害者のひとり」
「……っ!」
被害者。
その一言に、心臓を掴まれたような痛みが走る。
「じゃあ……やっぱり、俺は“された”んだな」
エリスは頷き、しかし冷たく言い放った。
「そう。でも――もう遅い。影は目覚めた。
あなたは“人間”であると同時に、“化け物”でもある」
重苦しい沈黙が流れた。
だが、その次の言葉は、さらに重く俺を揺さぶった。
「だから私は、あなたを利用する」
「……は?」
「管理局を潰すために。あなたの力が必要」
協力か、利用か。
救いか、支配か。
差し伸べられた手の正体は、まだ分からなかった。




