タイトル未定2025/08/18 05:09
包囲網は刻一刻と狭まっていた。
ドローンの光が網のように路地を覆い、逃げ道はもうほとんどなかった。
「……ここまでか……」
そう覚悟した瞬間――。
「こっちだ!」
声が響いた。
振り返ると、瓦礫の隙間から差し伸べられる手があった。
影に隠れるようにして立つのは、フードを深く被った人物。
その瞳だけが、不思議な光を宿していた。
一瞬、躊躇した。
罠かもしれない。
だが、このままでは確実に殺される。
「……っ!」
迷う暇もなく、その手を掴んだ。
次の瞬間、強引に路地裏の奥へと引き込まれる。
鉄扉が閉じ、分厚い壁が隔てる。
追跡ドローンの赤い光は、すぐには入ってこられない。
「……助かった……のか?」
荒い息を整えながら、俺はその人物を見つめた。
フードの奥から聞こえた声は、驚くほど静かだった。
「あなたは、まだ“人間”に戻れる」
「……何?」
「でも、このままでは完全に飲み込まれる。――“影”に」
心臓が跳ねた。
影という言葉を知っている。
ただの通りすがりではない。
「お前……何者だ……?」
フードの下で、わずかに笑みが浮かんだ気がした。
「答えはすぐに分かる。けれど、覚えておいて。私の手は、必ずしも“救い”ではない」
その言葉はまるで警告だった。
救いと裏切りが、同じ手のひらに重なっているような。
そして俺は――知らず知らず、その罠に足を踏み入れていた。




