第12話:追われる獣
夜が明けると同時に、街は目覚め始めていた。
だが、その光景の中に俺の居場所はなかった。
裏路地を駆け抜け、息を殺しながら隠れる。
耳の奥に、電子音のようなノイズが断続的に響く。
――監視されている。
「……もう追ってきているのか」
ビルの壁面に設置された監視カメラが一斉にこちらを追う。
次の瞬間、耳障りな機械音と共に無人ドローンが群れを成して現れた。
その目は赤く光り、俺に狙いを定めていた。
「対象捕捉――」
「排除モードに移行」
電子音声が響き、銃口が光を放つ。
瞬時に飛び退き、壁を蹴って上へと逃げる。
弾丸がコンクリートを抉り、破片が雨のように降り注いだ。
「……クソッ、まるで獲物扱いだな」
だが、その言葉に応じるように影の声が笑った。
《違う。“獲物”じゃない。“狩人”になれ》
「……!」
心臓が早鐘を打つ。
身体の奥で、また黒い熱が疼き始める。
使えばまた、あの惨劇を繰り返す。
それでも――追手は止まらない。
「……行くしか、ないのか……!」
牙のように伸びた爪が、コンクリートを抉る。
跳躍と共に、ドローンを一体、真っ二つに裂いた。
火花と煙が散り、爆発が背中を焦がす。
しかし、それは始まりにすぎなかった。
空から降下する武装部隊。
路地の出口を塞ぐ装甲車。
四方八方から、包囲網が迫る。
「――やれやれ。俺はもう、完全に獣扱いか」
乾いた笑みが零れた。
その笑みの裏に、恐怖と絶望が渦巻いていた。
だが同時に、胸の奥で別の感情が芽生えつつあった。
――生き延びるためなら、もう手段を選ばない。
影が囁く。
俺の心が応じる。
その瞬間、また一線を越えようとしていた。




