第5話「再会、そして決裂
やっぱりお前か、レヴナス」
その声に振り向いた瞬間、俺は確信した。
砦の頂で、雷をまとった黒髪の青年が剣を構えている。
「……クロウ」
正式には《クロウ・ナイトメア》。かつて俺と共に最強ギルド《ヴァルハラ・レイド》を率いた副リーダーだった男。
その剣が、紫電をまとう。間違いない。ゲーム最終イベントの報酬、《雷の王剣アグニル》だ。
「本当にお前だったんだな。まさかまたこの世界で会うとはな」
「……同感だよ。あのサービス終了から、こんな形で再会するなんてな」
俺が一歩近づくと、クロウは剣を構え直す。
「だがな、レヴナス。お前とは、もう手を組めない」
「……何?」
「お前は“神”だろ? 世界を救うだの、創造主だのと持ち上げられて、偉そうに振る舞ってるらしいじゃないか」
ミリアが少し前に出ようとするのを、俺は手で制する。
「そんなこと、俺が望んだわけじゃない。……お前もこの世界の異常さには気づいてるはずだ。NPCがまるで本物の人間みたいに生きている」
「気づいてるよ。だからこそ、放っておけない」
クロウの目が鋭くなる。
「この世界は“生まれてはいけなかった”存在だ。現実から抜け出した俺たちを囚える、虚構の牢獄だ」
「……つまり?」
「破壊する。この世界を。NPCも、バグも、運営の残滓も、全部。
そうすれば、俺たちは元の世界に帰れる」
「……!」
俺は言葉を失った。
クロウは、この世界を――この“生きている人々”を、全て切り捨てるつもりなのか。
「お前が“世界を救う神”を気取るなら……俺は“世界を壊す悪魔”になってやる」
バチッ、と空気が弾けた。クロウの魔力が高まる。
「次会うときは敵だ、レヴナス。覚悟しとけよ」
彼は雷光とともに跳躍し、砦の外へ消えた。
残された俺たちは、しばしその場に立ち尽くしていた。
「……どうして、あの方は……」
ミリアがつぶやく。俺はただ、拳を握りしめた。
「……仕方ねぇよ。あいつはいつだって、正義感が強すぎた。たとえ間違っていてもな」
俺の中に、ひとつの決意が芽生える。
もしこの世界に“敵”がいるとしたら。
それは、かつての仲間でさえ、例外じゃない。




