白髪ママの懺悔室
白髪ママの話
ごめんなさい……ごめんなさい。
貴女を疑うことしかできなくて、本当にごめんなさい。
「ただのモニターッスから! 映像なの! 本物じゃないから!」
私たちの目の前で、必死に誤解を解こうとする少女に罪悪感が湧く。
でもごめんなさい……。私は貴女を信用する事ができません。
貴女の事をよく知らないから……私達に余裕がないから……アナタを信用できません。
娘と変わらないような小さな少女なのに……本来なら大人が守ってあげないといけない年なのに……。
私たちの為に危険な事に巻き込んで、ごめんなさい。
最低と罵って貰ってもかまいません。
でもごめんなさい。
私は、メイルン シュライン。
私の一族は時折、特殊な魔力的事象を解く力を持つ者が生まれる。その才は『解の巫女』と呼ばれ、もれなく白い髪をもって生まれた。
私もそうだが、娘のテレサにも解の巫女としての力は備わったようだ。
少々お転婆だが、何よりも可愛い私の宝だ。
だが、その力のせいで私たちは逃げ出す事となった。
ガバス様に連れてこられたのは牢屋で、そこにいたのはテレサと変わらないような少女だった。
なんとガバスはこの少女に、私たちを任せるというのだ。
本当にもうダメかもしれない。
というかこの少女は誰なのだろう。
何となくだが……胡散臭い少女だ。それでいて不気味な存在とも言えた。
解の巫女としての目で、魔力の流れというものを捉えられないのだ。そのせいで酷く存在が希薄に見える。
まぁ逆に言えば、何があっても力尽くでどうにかできるという安心感はある。この少女に特別な力は備わっていない。
「こんな少女まで疑って……」
ここまで考えて、自分に嫌悪感を覚えた。
なにが力尽くでどうにかなるだ……。
どんなに怪しくて、どんなに不気味でも彼女は私たちの為に行動してくれていると言うのに。
ごめんなさい……でも、私は誰も信用ができないの。
貴女には本当に申し訳ない事をしていると思ってる。
大人である私が……いたいけな子供に助けてもらっているというのに。私は心の中ですら彼女を信用していないのだ。
地獄に落ちても仕方がないと思う。
でも、ごめんなさい。私はテレサが大事なんです。
不気味な少女は、私たちに気を使っているようだった。よくテレサにお菓子をあげているのを見かける。
夜な夜な、いつの間にか牢屋を抜け出しては食べ物を探してくれているらしい。
ますますこの少女の立ち位置が分からなくなる。
牢屋から抜け出していると言うことは鍵を持っているのだろうが、ならなぜ牢屋なんかにいるのだろうか?
ガバス様と少女の関係はよく分からないが、ガバス様は少女の会話を見る限り警戒する気配があった。
その事が少し不思議に思い、少女の不気味さを更に重いものとしていた。
ただ何も知らない少女を利用するにしては、その警戒具合が不自然なのだ。
少女に頼るという心許なさが見せたものとも思ったが、どちらかと言えば、利用するには不安を伴うといった雰囲気で、彼女の働きに疑問は持っていないようだ。
この少女に何があるというのだ。
失礼ながら私には無力な少女にしか見えない。事実、目で見てみてもそれは変わらなかった。
テレサは同年代の子供という事もあってか、不気味な少女の事が気になっているようだが、私としては余り関わって欲しくない。
どう足掻いても、私達親子は少女を利用しているのだから。
私は……私はテレサの為だったら、この少女を犠牲にするつもりさえある。私がその決断を取った時、きっとテレサは心に傷を負うだろう。
だから関わって欲しくはない。
だが、不気味な少女の機嫌を損ねて、手助けをしてもらえなくなったら困るのは私達だ。
上辺だけでも友好的に過ごすしかない。
「……自分勝手過ぎる……」
自然と口からそんな言葉が出た。
ごめんなさい。何度そう言っても足りない。
彼女は最大限の協力をしてくれているというのに。その小さな体で、できる限りの事をしてくれているというのに。
だから上辺だけでも友好的に、騙すようで罪悪感があるが、嘘の愛情を持って接することも考えた。
……考えたのに……。
少女が異能力を見せて心が折れた。
少女の見せた能力が、ただの映像ということは理解した。
問題は魔力の流れもなく、見たこともない異能力を発揮したことに恐れたのだ。
そして、その能力は本当に映像なのか疑問もある。サメが本物で襲ってこない保証はあるのか?
そうだ、結局私は不気味な少女を、無力だと判断して安心していたのだ。
その気になれば力尽くでどうにかなると。
それが揺らいだ。私の中で少女は決して油断などしては行けない存在となってしまった。
気づけばテレサを抱えて、少女から遠ざけていた。
もうダメだった。自分を騙して友好的に接するフリすら出来なくなってしまった。
魔力の流れもなく、異能を発揮した少女が酷く不気味に感じて、恐ろしい怪物に見えてしまう。
ただ、テレサを楽しませようとしてくれただけなのに。
ごめんなさい。
許して下さいとは言いません。
ただ……ごめんなさい。
貴女は友好的に接しようとしてくれているのに。
事あるごとにテレサにお菓子を与えようとする姿は、ウチの母を思い出させる。
彼女はテレサに嫌われたくないのだ……不気味な少女は、怯えられる事に怯えているのだ。
でなければ、あの年の少女が見知らずの親子に、こんなに気を使ったりなんてしない。
それが分かっているのに……私は貴女を信用できません。
ごめんなさい。
最低な大人でごめんなさい。
もし……機会があれば、彼女には迷惑かもしれないが、娘と同じように愛情を注ぐ努力をさせて下さい。
私に罪を償わせて下さい。
「いいっすか。他人を煽る時は、嫌いな相手の悔しがる顔を想像するんです。そしてタイミングを見計らって、相手を煽るぶりっ子ポーズ! さぁ一緒に! 「えへへ」」
でも娘に変なこと教えるのはやめて……。




