犯罪者か……ヒーローか
「任せとけ? 任せとけってどー言った了見ですかね?」
私のニコやかだけど険呑な視線に、パワハラ親父は仕方のない子供を見るように首を振った。
「あ〜あ〜、そんな目しねぇでくれよ。まったく損な役回りだぜ……。でも間違った子供を導くのは大人の責任だ。しっかりと大人が教えてやらなくちゃいけねえのさ」
「……質問に答えてねぇッスねぇ」
チッ、手をガッチリ握られてやがる……。
このパワハラ親父、何が大人の責任だよ。テメェがやろうとしてんのは強盗だろうが……。
「悪いことは悪い! 世の中はスジを通さなきゃいけない事もある……それが最近の子供は分かってねえんだ……」
「……なにいってんだコイツ?」
いや幼女ちゃんの言う通りね。何ほざいてんだよ、クセェから口閉じてくんねぇかな? ポーションが痛むだろ。
私と幼女ちゃんの宇宙人でも見るような顔を無視してパワハラ親父の演説は続く……。
「俺がガキの頃はみんな気性が荒くてな……毎日喧嘩ばかりよ……でもな、ぜってえ曲げちゃいけねえ心意気だけはもってたぜ」
「ふ〜ん、心意気はともかく、商品に出す金は持ってねぇんスかね?」
「それがねえヤツは、ロクな大人にゃなれねえのさ……小物らしく、下らん大人になっちまうのよ」
「そのようだね」
「大物になるやつぁ〜それを忘れねえ……幾つになっても輝くなにかがあるもんさ」
「もういいかい? 輝くオッサン」
パワハラ親父はカラッと笑って気持ちよさそうだ。
はいはい、自分は大物だって言いたいのかね?
「……オバケ姉ちゃん、このハゲの言葉が分からないんだけど何語?」
「はは、そう言ってやるなって幼女ちゃん。頑張って粋なセリフを用意してんだよこの部長さんは。支離滅裂だろ? それっぽいセリフを並べて気持ちよくなってんのさ」
「……ふ〜ん…………にてるね」
おっと、経験だね。キミは既に、このパワハラ親父より人生経験豊富なんじゃない?
「そうだね。キミはこのパワハラ親父の会話の通じなさに覚えがあるはずさ。似てるはずだよ、程度は低いけど一緒だからね」
「……なるほど、あれと同じか」
『パーカー兄貴』だよ……。
覚えてるよね? 逆恨みで私や幼女ちゃん、そして負け犬を襲った槍使い……。
今まさに幼女から強盗を犯そうとしている、このパワハラ親父ねぇ……。驚くことに――
「……コイツじぶんが『悪人』だと思ってない」
「そうだね。ガキから商品を盗もうと企んでる小悪党のクセに、自分が大物の凄い傑物で、子供の為に行動していると本気で思い込んでんのよ」
幼女ちゃんは不気味なものでも見るようにパワハラ親父を見上げる。彼はいまだにポエムに夢中だ。
「……んな馬鹿な。げんに強盗しようとしてるヤツが……」
「このオッサンは勿論悪党で根底にはポーションを盗もうとしてる気持ちがあるよ。でも子供の教育とかで誤魔化してんのね」
「……誰を?」
「自分を」
ふふ、例えるなら学校にゲーム機を持ち込んだ生徒から、ゲーム機を没収した先生の気分なのかな? コイツの中では、そうなんだよ。
けどそのゲーム機は生徒に返す気ないし、次の休日に売りに行こうとしてる先生だぜ。
さて……とはいえね。ぶっちゃけこう言った強盗野郎が現れることは想定してたんだよ。
当たり前だよね? ダンジョンなんつう人目につかない閉鎖空間で、無力な子供が商売をするってんだよ?
相手が弱そうと見れば強気になる輩にナメられるのは目に見えていた。
だから私達は警戒をしていた。いつでも逃げられるようにロッカーに、あらかじめスキマを作成してから商売に挑んでいたんだ。
もちろん私の能力であるスキマは弱点が多い。
怪しまれて暴れられたりでもしたらスキマが無くなって解除される危険性もあるんだ。
でも、隠れることに関しては一級の能力だと自負している。あらかじめ作成しておいたスキマなら一瞬で姿を見失わせることができるんだ。
後は急に消えた私達に混乱しているところを、隙を見て逃げ出せばいい……。
ふはは、テメーみてぇなハゲの対策は怠ってねぇんだよ、こちとらさぁ!
……でも、
「……」
手ぇ握るのは反則じゃん……。
怠ったわ! スキマに逃げ込めねぇじゃんよ……。
クソッ! このパワハラ親父がよぉ! 誰に断って幼女の腕掴んどんねん! セクハラで訴えんぞキチガイ親父ぃ!
私って実は、腕を掴まれただけで無力に成り下がんだよね。そして有用そうな能力も持ち合わせていない……。
う、う〜ん、分かってやったワケじゃないんだろうけど、最適解を取りやがるわ。
はぁ〜仕方ねぇか……。
「子は親を見て育つんだよな。見せる背中ってのは大きくなくちゃいけねえ……物理的な話じゃねえぜ? 信念のこと――」
「あ〜はいはい、オッサンオッサン。もういいから」
パワハラ親父の言葉を遮ってやれば……スッと表情をけしてイカつい顔から目玉だけを私に向けてきた……。
はは、気持ちよく演説かましてたところを邪魔されて不機嫌かい? 大した大物だねぇ〜。
「ポーションがお望みならお渡ししましょう。それで見逃して貰えませんかね?」
「…………勘違いさせちまったかな? 俺はポーションが欲しいんじゃなくて、嬢ちゃんたちが道を間違えないよう」
「幼女ちゃ〜ん、この部長さんにポーションを差し上げちゃって……」
「……いいの?」
私は静かに諦めたような笑みを浮かべる
幼女ちゃんは肩をすくめてテーブルのポーションを手に取った。
「……分かった」
そして、彼女は……一リットルポーションの瓶を片手でシッカリ掴むと、一歩踏み出した…………大きく。
不自然にガッと踏み出した前足に、彼女の胴体は後ろに傾く……。
そしてスローモーションのように幼女ちゃんの体はグリンとネジ曲がり、下半身はそのままに私達に背を向ける……。
そんな光景に、パワハラ親父は不思議そうに首を捻った。
「……くれてやる」
野球の投球フォームのように、幼女ちゃんの投げ放った瓶は……パワハラ親父の顔面に直撃した。
パシャーンという水っぽい音と砕け散るガラスの瓶……そして飛び散る飛沫に、後ろで成り行きを見守っていたパワハラ親父の部下達が目を見開く……。
「クヒヒヒヒ、お代は3000ネルスになります」
ニヤニヤ笑いながら言ってやる。
望み通りくれてやるぜ! お代はちゃんと払えよなー!
「「ぎゃははははっ!!」」
大爆笑の私達をよそに、パワハラ親父といえばポタポタと顔面から内容物の液体を垂らしながら
……無言だった。
ふぅ〜ちょっとスッキリした! 馬鹿がよぉ、テメェ気にくわねぇんだよハゲ……ガキなめてんじゃねぇぞ。
んでも、ちょっと見通しが甘かったのは否めないね。コイツ手ぇ離しやがらねぇ……。
さて、どーするかね。完全に敵対しちゃったワケだが……。
まぁこのパワハラ親父、今まで私達が敵対してきた相手と比べると、いや比べるのが烏滸がましいほど小物。
というか今までのが化け物過ぎるというのもあるけど。
まぁ、それでもね。
いくら強かろうが弱かろうが、ガキの腕力で勝てないって意味では変んねぇんだよねぇ……。
パワハラ親父は、私を掴んでいる手とは逆の手で、顔の雫を拭い払う。そして――ニッカリと笑った。
「はっはっは、跳ねっ返りな嬢ちゃんたちだな〜!」
ふぅ〜ん、あくまで大物を気取りたいか。小物らしい大した自尊心だね。
あんたがブチ切れてんの分かってんだぜ。
小物なんだから無理すんなよ。簡単だよ? 小物のメッキ剥がすなんてさ……。
「キヒヒ、子は親の背中を見て育つんだっけ?」
「……」
んふふ、効果的な煽り場所はここかな〜?
「アンタ……娘さんいるんだ?」
「……おうさ、嬢ちゃんたちと変わんねえくらいの――」
「しょうもねぇガキなんだろうなぁああ!? アンタの背中を見てんだもんよぉ! 生まれた時から負け組の下らねぇメス豚ちゃんなんだぁ。アヒャヒャヒャ!」
グンッと一瞬で腕が引っ張られ、衝撃で首が天井を向く。
ただ腕を引っ張られる……それだけの行動で私の体は、まるで強風で飛ばされたゴミ袋のように、回転しながら飛ばされた。
ドンッと背中からロッカーに叩きつけられる。
ロッカーは私の体を起点に歪んだ。
歪むロッカーに背を預けながら座る私に、ドスドスとパワハラ親父の重い足音が迫る。
「まったく、最近の親ってのは子供の躾がなってねえよなあ……」
私は座りながらグリンと首を上げて、ニィイイと笑った。
「あ、本当のことってイラつくよねえ? チンケな娘さん元気ぃ?」
「……」
小悪党でも自分の子供に愛情があるんだ?
お前みたいな自覚のない小悪党ってさ。こう言うの効くよねぇ? 自分が真っ当な人間だと、立派な人間だと思い込んでるから、愛する者の罵倒に耐えられない。
「こういうのは、ちゃんとした大人が叱ってやらなきゃいけねえんだ」
「立派なパパだねぇえ。幼女暴行オジサァン? それで幼女に対して強盗するんだ。娘さんにも見せてあげたい犯罪者だねぇ」
今だにコイツはこの強盗を躾だと思ってんだぜ、笑えるよな? 自分はマトモな人間だと思ってんだ。
パワハラ親父はため息を吐いたあと、怒りを抑えたようにつぶやく。
「悪いことをしたら謝る! ……そんな当たり前のことすら教えられてねえんだよ。嬢ちゃん教えてやる。これは犯罪じゃないんだ。犯罪者は嬢ちゃんなんだよ。ダンジョンでは危害を加えられたら反撃をしてもいいんだ」
「アハハハハ、強盗が犯罪じゃない!? いくらガキでも騙されるワケねぇだろハゲ! あ、そうかアンタのバカな娘なら騙されるんだぁ? 知能の足りない娘だねぇ……」
なにが犯罪じゃねぇだ。ガキを舐めてんだよ。何もしらねぇってさ……。騙せるってナメてる。
「これは躾だ。親がやってくれないなら、俺がお前の為に教えてやる。おい! 逃がさないようにしとけ!」
パワハラ親父が部下達にそう指示する。
部下達は面倒そうにしながらも、入り口に立って私達の逃げ道を塞ぐ。幼女ちゃんにも迫るが、彼女はつまらなさそうにポッケに手を突っ込んでいた。
「いいよ。お前のやったことが犯罪じゃないなら……証明してやるよ」
私は右手を上げて、手のひらを差し出す。
そんな光景をパワハラ親父と部下達は不思議そうに見ていた。
さぁ、選択肢の時間だ。分岐を間違えるとバッドエンド直行だぜ。
私の手のひらから……『モニター』が浮かび上がる。
そう、このセーフティゾーンには私の能力で監視カメラが設置してあるのはご存じの通り……。
そして流れる強盗の瞬間と暴行の瞬間。
それを無表情で見ていたパワハラ親父は、吹き出した。
「アッハッハ、何度も言ってるだろ。犯罪者は嬢ちゃんで、俺は躾をしているだけだ。……それがどうしたんだ?」
すげぇよなコイツ、本気でそう思ってんだよ。
まぁね、人気をエネルギーに変える何処ぞの町長さんじゃねぇんだ。アンタには意味ないだろうよ。
「……それを判断するのはアンタじゃねぇよ」
「じゃあ警察か? はあ〜、仕方のない嬢ちゃんだな」
「お前らは、もう終わりだ」
「……シッカリと躾ねえとな」
パワハラ親父は、私の襟首を掴もうと手を伸ばしてくる……。そんなパワハラ親父の顔面は――
「ッガッ!」
後ろからシャベルでぶん殴られた。
あ、そうそう。判断するのは警察でもないよ。
お前の『部下』だ……。
「ッ〜〜!! お、お前、何しゃがんだ!!」
パワハラ親父は後ろから殴った部下に掴み掛かる。
「ぐぁ!!」
それを別の部下が、剣で顔面を叩きつけた。
顔面を押さえて、うずくまったところを、また、別の部下が背中に蹴りを入れる……。
「あ! ッ! おま、お前ら!! いったい何のつもりだ! ギッ! やめろ!! キサマらぁ!! これは犯罪だぞ!!」
部下達はパワハラ親父をタコ殴りにしていく。
急な裏切りにパワハラ親父は怒鳴り、罵倒するが部下達は延々とパワハラ親父をコレでもかと痛め続ける。
「な、ナンデ!! ヤメッ……」
やがて……
うめき声を上げながらも蹲って動かなくなったパワハラ親父の姿があった……。
「ギィッ!!」
それでも暴行は止まらない……。
五人の部下は、何かに駆られるように、必死でパワハラ親父に攻撃を続けた。
「ケケ……」
私はゆっくりと立ち上がり、ペタペタとボロ雑巾のようになったパワハラ親父に歩み寄る。
そこでようやく、パワハラ親父への暴行は収まり、部下達は近寄ってきた私から怯えたように後退る……。
「不思議かなぁ〜?」
私は蹲るパワハラ親父の、残り少ない髪の毛を掴み上げると顔を近づけてニィイイと笑った。
パワハラ親父の顔はボコボコに鬱血し、血を流している。
虚な目は、私の笑みを見た瞬間、確かに恐怖に歪んだ。
「や、ヤメッ……」
「不思議だよね〜? なんでアンタの部下が裏切ったんだってさ〜……。アンタには分からねぇだろうなぁ? 自分の都合のいいことしか考えられねぇアンタにはねぇ……」
優し〜い私は教えてあげるよ。
あぁ? 違うな。なんだっけ?
『ちゃんとした私が……お前に……教えてやらなけりゃあいけないんだ』……だっけ?
「んふふふ、なんで部下さんたちがこんな事したのか……例えばぁ〜『正義に目覚めた部下戦隊は……美少女を助ける為に行動した』…………ハズレぇええ!!」
まるでパワハラ親父の眼球でもナメそうな距離で舌を出しながら笑う私に、部下たちは一歩退がる。
そのままパワハラ親父の髪を引っ張り、部下達に向けてやる。
「ほぉ〜ら良くみてみなぁ〜、アレが正義の鉄槌を下した顔かな〜? もちろんアンタに似てクズみたいな部下さんだよ」
部下達の顔に浮かぶのは、正義を執行した正義感でも、イラつく上司に復習した満足感でも、弱者を痛ぶった快楽でもなかった。
「なん、で……」
……ただただ……『焦り』
「なんでこんな顔してんだろうねぇ〜? 部長さん分かる?」
コイツらちゃんとクズなんだよ。
最初はパワハラ部長の指示に従って私達を追い詰めたしね。
そう、コイツらは私たちなんてどうでもよかった。もしかしたらポーション売ったオコボレでも期待してたかもね。
「私達を追い詰める……そこに私は二つ目の道を用意してやったんだよ。私言ったよね? 映像見せながら【お前『ら』は、もう終わり】だって」
そう、まとめて複数形にしてやったんだ。
私達への強盗行為についてさ。お前も共犯だってね。
「ふふふ、この時点で彼らには二つ目の選択肢が出来た」」
私はまたパワハラ親父に顔を近づけて笑ってやる。彼のボコボコで表情すら分からない顔がヒュっと息を飲む。
彼らに迫った二つ目の選択肢。
『イかれた上司の魔の手から……少女達を救った』……という言い訳。
証拠映像があるんだよ……。私達の証言があれば部長もろとも犯罪者だ。
一番簡単なのは、私達を捕まえて映像を消させる。
それは、犯罪者になってまで行いたいほど簡単かな?
だったら無理してでも少女を救った『ヒーロールート』だろ? 彼らは部長をリンチすることで犯罪者になるのを避けたんだ。
別に山賊じゃねぇんだよ。こんな発展した世界でわざわざ犯罪者にゃなりたくねぇもんな。部長一人の感情のために警察に追われたくねぇよなぁ? 証拠もあんのによぉ……。
犯罪者になるより、イカれた上司から幼女を救ったヒーロー……てな?
「ふふふ、答えは出たねぇ……アンタの部下が、一番簡単な幼女の捕獲をしなかったんだ。それが答えだよ。
アンタのやったこと『犯罪』みたいだねぇ〜」
髪を掴んでいた手を離すと、ゴンと床に頭を打ちつけた。
「さぁ幼女ちゃん。お会計の時間だよ」
「……5000ネルスになります」
パワハラ親父が震える折れ曲がった指で操作すると、幼女ちゃんが「……まいど」と小さく呟いた。
「あ、そうそう。部下のみなさぁん〜?」
私がいい事を思いついたように振り返れば、部下達はビクリとする。
「こういうシナリオはどーかな? クソな上司が部下を囮にして情け無〜くモンスターに殺されちゃうの!」
パワハラ親父の口から悲鳴が漏れる。
「それをさぁ〜、コイツの娘に聞かせてやろぉ〜ぜ〜……『愚かな部長は自分たちを裏切って卑怯にも囮にした。その結果、無様にも口だけ部長は魔物に殺されちゃいました』卑怯でバカで醜い愚かなお父さんの最後を聞いた娘さんの顔がみてみたいな〜。そうしたら映像は消そうかな〜」
部下達がドン引きした顔で、部長への暴行を再開した。
「んふふふ、冗談だよ」
部下達も流石に殺すまではしねぇんじゃね? どーでもいいけど。
「さて、帰ろっか幼女ちゃん」
「……うむ」
その時、簡易セーフティゾーンにゴォオというボーリングの玉が転がるような音が響く。
そして、奥の扉が開き一方通行のハズの球体転車が停止した。そして現れたのは。
「あれ、若造兄さん?」
まぁ、ダンジョンの人間なら転車の逆走も可能か。でも何でここに?
「ッ、ヤベ」
「人工ダンジョンの職員だ」
焦りはじめる部下達。お前らはタバコが見つかった学生か!
「お、おいッ!! こ、殺される! このガキどもを捕まえろ!! ダンジョンの中で商売してたぞ!」
若造につかみ掛かるようにパワハラ親父が四つん這いで這ってくる。
思ったより元気だねパワハラ親父。殺されないように必死じゃん。ウケる。
若造は氷の表情でセーフティゾーンを見渡した後、軽くため息を吐いて口を開く。
「……なるほど、確かにダンジョン内で商売するのは禁止してますね」
「は、早く! 殺されちまう!!」
若造は片膝を突いて、パワハラ親父の肩に手を置いて優しく笑みを浮かべた。
「あくまでダンジョンの『キマリ』です。そしてお前がやったのは、強盗という名の国が法律で禁止していることですね」
「あ……え……?」
次の瞬間、パンという弾ける音を立てて、まるで銃でも撃たれたようにパワハラ親父はブリッジの姿になっていた。
対して若造は手のひらをパワハラ親父の顔があった位置で開いている。
何した? 掌底? もしかしてデコピン?
う〜ん、あ、ネックレス光ってる。アレか……魔道具みたいなの使ったのか。
そして若造はスッと立ち上がると、私達に向きなおる。
ヤベ、商売してるのバレた。というか、ここにやって来たということは、カメラかなんかでバレてたのかもしれん。
カツカツと私達の前までやって来た若造は、氷の貴公子のような顔を向けて来て、難しそうな顔をした後……。
「どうかダンジョンだけは! コイツら死ぬより酷い目に合わせますので! どうか! どうかダンジョンだけは見逃してください!!」
腰を直角に曲げて頭を下げて来た……。
「……」
「……」
いや、見逃すってなんだよ……。
もしかしてお前……私達が『テメーんとこのダンジョンで絡まれたんだけどー。あー滅ぼそ……』とかいうヤベー災厄みたいな存在とか思ってる?
出来るかボケッ!!
子供相手に何考えてんだコイツ!!




