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いや、ソレは駄目だろ……


「それは駄目でしょう!!」


 ん? なんか後ろから聞こえんな?

 あ、やべ、いつの間にか若造兄ちゃんが会議室にいやがる……。ゲームしてるところ見られたか。


「「……」」


 幼女ちゃんと目を見合わせる……どうするアレ?

 若造兄ちゃんはテーブルで頭を抱えながらも、指の隙間から私達をチラ見している。

 ったく、しょうがねぇなぁ……。


 私達はゆっくりと前を向いて――

 

「フンッ!」「……セッ!」

「フンッ!」「……セッ!」


 腕をひたすら動かした……。

 はい、ゲームの続きをやりまぁすッ! 


「えッ!? 続けます!? よく無視して続けられますね!?」


 若造兄ちゃんはテーブルから立ち上がって絶叫した。

 

 いや別に見られてもいいでしょ! 何か問題はあるか? ねぇよなぁ……そうだろ?


 上司のキツネ顔に報告するか? オメーんとこのヘタレは私達のこと構ってる暇なんてなさそうですがねぇ?


「よっしゃ! 渓流コースはスピードってよりバランスっぽいぜ幼女ちゃん!」

「……みたいだね。岩にぶつかるとダメそう」


 グルグルとレバーハンドルを交互に回し、繊細なコース選びで川を下る。画面のゴムボートに乗った男女は私たちの動きに合わせてオールを漕いでいた。


 ほぉ〜、ぶつからないように気をつけてプレイしてるから気付きにくいけど、景色のグラフィックが素晴らしいな! 舞い落ちる葉っぱや、鳥の鳴き声が没入感を高める。


「あ、ほら幼女ちゃん見て魚だよ。うふふ」

「……自然のなんと雄大なことか」


「なんでこの子達、牢屋の中で自然の素晴らしさを味わってるんですかねえ!」


 若造兄ちゃんが鉄格子を掴んで叫んでくる。

 

 なんだよ五月蝿(うるせ)えなぁ! お前も一緒に景色を味わいてぇのか! あぁ!?

 ゲームの良いところで邪魔しやがってよぉ! オメーはお母さんか!? いま宿題やろうと思ってたんだから!


 クソ、携帯ゲーム化で外でプレイ出来るようになったのは良いけど、私の領域と違って邪魔が入るのは考えてなかったわ。


「仕方ねぇ、少し相手してやっか……」


 このままじゃゲームもままならんわ……。

 ポンッと軽く筐体(きょうたい)を叩くと【ライドン ワールドツアー】が時を止めたようにピタリと停止する。はい、一時停止ね。


 ライド筐体の座席シートから飛び降りて若造兄ちゃんに振り向けば、彼はビクリと体を跳ねさせた。


「こんにちは若造お兄さん、どうかしたッスか?」

「う……え、どうかって、ソレは……」


 若造兄ちゃんは震える指で鉄格子越しに【ライドン ワールドツアー】の筐体(きょうたい)を指差す。


 やっぱツッコむよねぇ……ビビってる癖に、上司と違ってシッカリ目の前の問題に向き合いやがる。

 見て見ぬふりするのも仕事をする上で大切な事だと思いますけどねぇ。そんなタイプじゃねぇのか……。


 うむ、そう考えると融通の効かない委員長っぽいな! いや、顔立ちは委員長ってより生徒会長か?

 整った容姿に物静かな雰囲気……私達と会話さえしていなければ、クールな瞳の線の細いイメケンさん。


 アレだ。漫画で言うなら『氷の貴公子』とか言われてそうなタイプ!


「そ、それですよぉ!! なんで牢屋の中にそんな巨大な装置が鎮座しているのですかッ!!」


 目をひん剥いて【ライドン ワールドツアー】に対して捲し立てる若造兄ちゃん。端正な顔を真っ赤にして唾を飛ばす。

 うお! この氷の貴公子、熱いじゃん!!


「うん? う〜ん……あれッスかぁ……」


 さて、なんと答える……。


「最初から置いてありましたよ?」

「有り得ませんねえッ!! なんですぐバレる嘘をつくのですか!! まだアチラのダンジョンが用意したと言われた方が良かったですよ!!」


「じゃソッチで……」

「『ソッチ』でッ!? 『じゃ』ってなんですか、『じゃ』って!」


 声量でけぇなコイツッ!!

 スカートの丈が短えギャルでも見つけた風紀委員会かよッ!! 大人しく生徒会長やってろよ!


 まいいや……。


「で……若造お兄さんはどれがいいんですかね?」

「……え? ど、どれ……とは、何……ですか?」


「『最初から置いてあった……』『向こうのダンジョンが用意した……』『私達の私物……』でもいいですよ?」

「……何を言っているのですか?」


 淡々と答える私の態度に、若造兄ちゃんは狼狽えながらも疑問でいっぱいの顔をする。

 

「ほんと、私はどれでもいいんスよ……。そして、若造お兄さんにとってもそうじゃね?」


 どーでもいいと言っても良いね。

 牢屋に見知らぬ装置があったからってなんだ?


「結局私ら、ここの人工ダンジョンさんに一時的にお邪魔してますけど、他人なワケですよぉ。前も言った通りそのうち出ていくし無害だと断言しますよ。メシさえ貰えれば居ないものとして扱って構わない……むしろそれが正解」


 アンタ以外は正解の行動とっているように見えるね。

 アンタだけだよ。私達を必要以上に警戒してんのは。


 今回さぁ、ゲームしてるところ見つかっちゃったけど、警戒しなくていいと感じたから適当に誤魔化してんの。


 むしろ、コイツが警戒してんのなら今更だ。警戒してないヤツまで警戒させるのは駄目だけどね。

 だからコイツにならある程度見られても構わない。


 アンタ以外は出来てるぜ、私達に構ってる暇ねぇから必要以上にツっこんでこない。面倒臭い厄介ごとを増やしたくないんだろうね。

 それでいいんだよ……。私達はわりと無害だ。

 私達はソッチの邪魔をしない。

 

 そして、そちらもコッチに構わない。

 それで皆んなハッピーハッピー。


 意味ねぇんだよ。

 今アンタら忙しいだろ?

 私らに構ってる暇ねぇんだよな?


「放っときゃいいんだよ……」


 別にアンタらに恨みなんてねぇんだからさ。

 そして、アンタら(ぬる)いからさぁ、敵対しなけりゃ私たちのこと放っておくつもりのはずさ。

 アンタが変に警戒しなきゃね。


「これね。別に危険なモンじゃないッスよ。というか、お兄さんも何となく分かるだろ? これが破壊兵器に見える?」

「…………見えません」


「おけ、でさぁ……危険なモンじゃなかったら、どーでもよくね?」

「そ、そんなワケには……」


 なんで?

 

「ただの遊び道具ですよ? 牢屋に見知らぬ機械があってもソチラに問題はないのでは?」

「……そう、なんですかね?」


 若造兄ちゃんは、考え込むようにしたあと深々と頭を下げた。


「すみません……少し恐怖で混乱していたようです。取り乱しました。大声を上げて申し訳ありません」

「……構わないッスよ」


 よっしゃ誤魔化せた!!

 馬鹿が!

 騙されやがったわゲヘヘ!!

 

 もう面倒臭せぇからゲームの邪魔すんじゃねぇぞ。


「はっはっは、分かってくれたらいいんスよ!」

「ええ、私はてっきり牢屋を壊す大型爆弾ではないかと思っていました。お恥ずかしい……」


「そ、それは恥ずかしいね」


 ファンキーな爆弾すぎんだろ……。


「はは、牢屋を抜け出すワケないでしょう」

「はは、そうですね」


 さて解決したことだし幼女ちゃん、ゲームの続きしようぜ! あれ、幼女ちゃん? アイツどこ行った?


 その時、会議室の扉が開いて…………片手にジュースを持った幼女ちゃんが入ってきた。


「「……」」


 彼女は停止する若造兄ちゃんの横を通り抜けると、牢屋の扉を開けて入る。そしてご丁寧に鍵をかけ直していた……。


 カシュ! とジュースの蓋を開けて煽ると、引き攣った顔の私に向かって話しかけてくる。


「…………おわった?」

「うん……丸め込んだけどテメーのせいで振り出しに戻ったところ……」


 お前、いくら何でも人工ダンジョンさんナメすぎだろ……。

 若造兄ちゃんは目一杯息を吸い込んで叫んだ……。



 

「いや、それは駄目でしょう!!」


 


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― 新着の感想 ―
怪異に対しては、目を逸らし思考停止することが賢い選択肢になる場合も珍しくありませんね……。 気づいてしまった、理解してしまった若造くんは正気度ロール(SAN値チェック)をどうぞ。
未読になってて土曜日に読んだよな?と思ったら更新来てたのか、ありがてえ グラサンのにーさんに負け犬にーさんと続き新たな貧乏くじのにーさんが決定したわけだが… 全国のお兄さんは2人組の幼女を見たら逃げろ
氷の貴公子系キャラは内面に熱いハートを持ってるからキャラ崩壊してないな、ヨシ! この章では幼女係としてよろしくな!負け犬もそれが良いと言ってます
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