閑話 日向と祐樹の初見
あれは桐山祐樹が中学生になってからだろうか。私は祐樹とは違う隣町の中学の保健医に配属になったのだが、噂はよく聞いていた。
《人殺し》《殺人鬼》《心を壊した少年》《化け物》《精神異常者》とかいろいろ言われていたというのは私が隣町の中学校の保健医になっていたのだが、それでも噂は聞こえてきていた。
私は祐樹のことは気になっていたが、さすがに中学校が違うというのはかなり大きな障害となっていた。だが、チャンスは桐山祐樹が中学二年生になって文化祭も終わる10月になってやってきたのだ。
それは市内にある中学の保健医が生徒の健康管理の実態、栄養などのことについて話し合う会議が、祐樹の通う中学校で行われることになったのだ。
もちろん私はそのようなチャンスも逃すわけもなく、祐樹の中学の保健医に許可を取り、学校見学させてもらうことにしたのだ。
そして、私はその日に全てを知ることになる。
「こんにちは、畠山先生」
「えぇ、こんにちは神谷先生」
畠山先生は祐樹の中学の保健医で、保健医で30年目になる大ベテランの先生だ。
「急に学校見学したいと言って申し訳ない」
「いえいえ、他の学校の生徒を知ることも保健医としては大切なことですから、謝られるようなことではないですよ」
「そう言ってもらえると助かります」
「ふふ。では、今は昼休みなので一年生から順番に周りましょうか」
「ふむ、ではお願いします」
私は順番に1年1組から教室の様子を見ていくのだが、私の中学とはそんなに変わりはないようだ。
「どうですか?神谷先生の中学の所と違う所はありますか?」
「ふむ・・・そんなに変わらないです。私の所も一緒です」
「そうですか。では、次は二年生の教室に行きましょうか」
私は見逃さなかった。二年生と言ったとき畠山先生が一瞬だけ表情が暗くなるのを。
「ここが二年生の教室ですね」
順番に見ていくと、昼休みなのに机で寝ている子を見つけた。
「ふむ・・・あの子は?」
「あの子が噂の桐山祐樹ですよ。いたって普通の子なのですが・・・。噂が先走ってね・・・」
「なるほど・・・今は学校生活どのような感じなのですか?」
私の質問に少し困った顔をする畠山先生。
「そうですね・・・入学した頃はとても気が強い感じではなかったのですが、中一の秋ごろに性格が真逆になったような感じで・・・。それまでいじめられていたのですが、ぱったりといじめが無くなったのです」
そんな簡単にいじめが無くなるのだろうか?私は生徒を見てきたが、簡単になくなるものでもないし、いじめる側といじめられる側の立場がひっくり返ることもないだろう。どういうことなのだろうか?
「いじめの無くなった理由は、今まで暴力まであったらしいのですが、その時は殴られても平気な顔でただ一言言ったそうです」
「一言とは・・・?」
「『死にたいの?』と・・・。」
ふむ・・・ある意味すごいやり方だが、自分の罪を利用したってことか。人を殺した経験がある人が、『死にたいの?』と言ってきたら、それは恐怖だろうな。それに相手からしたら本当に殺されるかもしれないって思えるだろうな。
「どうかしましたか?」
どうやら少し考えすぎてしまっていたようだな。だが、桐山祐樹は賢いということだけは分かった。それに詩乃から聞いたような性格は心の奥深く埋もれたようだな。
「いえ、それでは今はどのような学校生活を?」
「今はクラスからは孤立していますけど、いじめもなく平和な感じですよ」
クラスメイトは関わらないってっことで意見が一致したのだろう。それにしてもますます興味が湧いた。
「では、三年生に行きましょうか」
そしてその日は会議をして普通に仕事してから、家に帰ったのだ。
それが桐山祐樹を知るきっかけだっただろう。
「っていうことがあったのだよ。雪。」
「そんなことがあったのですね。ですが、まだ保健医と詩乃さんの話しかしていないですよ?」
「ふむ・・・それなんだが、私が担任から聞いたことは直接祐樹から聞くべきことだと思うのだよ。」
「そうですか・・・。なら、一つだけお願いしてもいいですか?」
「聞ける範囲にはなるが・・・」
「では、これでお願いします」
私は雪からの提案に驚いたが、それ以上に面白いと思ったので乗ることにした。
「では、今から祐樹さんの家に行きましょうか」
待たせてしまって申し訳ないです。やっと再開ですかね・・・?免許の勉強をしながらなので、頻度はすくないですが、頑張ります!!
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