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#2迷彩鼠と腹の事情

月はやがて太陽に成り代わり、闇を照らす支配者となる。その術を知るものだけが夜を支配するのだ。



ジンとナズナは、穴掘り猫の街グラーベンを目指して北上していた。


夜になると土が湿り、少し足場も悪くなる。走っていた二人も、やがて歩くことにした。


「はぁはぁ、だいぶん冷えてきたなぁ。」


ナズナが言うように、夜の森は昼の間、光合成をするために熱を発散するのとは逆に、夜は二酸化炭素を放出するだけだ。


「足が棒になりそうだよ。今日はもう休もうよ。」


「そうだな、夜の森は方向を見失いやすい。それに妖精の迷路にでも迷いこんだら厄介だ。」


言うなり、ナズナは木々の間から見える星を頼りに位置を計った。


「少し西にずれてる。でもまぁ、予想範囲内だろう。」


「じゃあ休もうよ。」


ジンは早く休みたいのか、その場に座り込む。


「よし、ここで休憩だ。見張りはいつものように交代でやる。」


「うん、分かってるよ。三時間毎だよね。おやすみ〜。」


ジンは言うと、木の根を枕にして横になる。


「お前が先に寝るって決まった訳じゃ……まぁいいか。」


ナズナは荷物の中から、毛布を取り出して自分の体を覆った。


森は危険が多いように見えるが、身を隠すためには都合が良いのである。


逆に、荒野や砂漠などの見通しの良い所では盗賊などに見付かってしまう恐れがある。


ただし、常に森の中で生活し領域としている獣にとっては、侵入者を敵と見なし危害を加える可能性は、ないとはいえない。



背の高い広葉樹を揺らしながら、陰が二人の寝所に近付いてくる。


その数は一匹ではなく、同種の群れが取り囲むように集まってくる。


「ジン、悪いな。五分しか経ってないが起きろ!!」


低く、鋭くナズナが叫ぶ。

ジンは疲れを見せず、すぐに目を覚まして警戒体勢に入った。


右手は装飾銃に伸ばし、左手は地面に着いたままだ。

「第一兵装解放!!」


ナズナが吠えると、右腕のタトゥーが光り、鉄のナックルのような武器になる。

ジンは身動きを取らずにそのままの体勢を保つ。


茂みが揺れて、ナズナの半分もある太った大鼠が飛び出した。


鋭い牙は獰猛だが、その大きさ故に非常に動きが遅い。しかし、その毛皮は葉っぱや草の色と酷似していて、見ている人間を惑わす。通称

「迷彩鼠」


ナズナは間髪入れずに、鼠の頭骨を殴って砕く。


緩慢な動きでも、集団になると全て避けるのは難しい。


できるだけ、攻めるのではなく、襲ってきた相手だけを狙い打ちにする。


ジンは、サポートに回りナズナのカバーできない鼠を撃つ。


しかし、遠目で暗く、見分けがつきにくい迷彩鼠にはなかなか当たらない。

当たったとしても、腕や足などで致命的なダメージを与えられない。


「くそぉ、見えにくいよ。これじゃ弾が勿体ない。」

ジンは苦戦していたが、ナズナにとっては余裕だった。あっというまに鼠の死体の山ができた。


残りの鼠も、戦意を喪失したのか去っていった。


「ごめん。全然役に立てなかった…。」


ジンは落ち込むというよりも、心の底から悔しいという顔をしていた。


「状況によっては、戦いにくい敵もいる。夜だしな。」


ナズナは気にしていない。

力を認めてほしいジンは、それが気に入らない。


「でもオカシイな。普通迷彩鼠ってのは臆病で、他の生き物が領域に侵入してもできるだけ隠れて通りすぎるのを待つもんなんだが…。」


「あっ!!」


ジンが何かを見つけた。


「どうしたジン!?」


「もしかして、卵?」


そういうと、さっき枕にしていた木を指さす。


「なるほど…卵か、それなら納得できる。さっきのは全部♀の迷彩鼠だったんだ。卵を守るために攻撃的になっていたんだな。」


ナズナは一人で大きく頷いた。


「でも、なんか俺らが悪い事したみたいで、後味悪いなぁ。」


ジンは少しだけ悔やんだ。

「いや、でも得したかもな。迷彩鼠の卵は栄養価も高くて毒もない。ヘルシーだし味も良いらしい。」


ナズナは木に登って、卵を集め出した。


「おい、ナズナ。それはマズいんじゃねぇの……。」

「不味くないって、美味いらしいぜ。」


ナズナは上機嫌だ。


木から降りたナズナを、ジンは少し呆れて見ていた。


「どうした?固いパンは嫌だっていったのは誰だよ?食べれる時に食べれる物があるんだ。食べなきゃ損だろ。」


「俺、いらない。固いパンでいいや。」


ジンは小さく言った。


「いらないのか?じゃあ俺は目玉焼きにして食べよっと。」


ナズナは、ジンの事を気にしているそぶりを見せず、鍋と火打石を荷物から取り出した。




結局、ジンは仕方なく固いパンを食べて、ナズナは目玉焼きをニ個も平らげた。

卵は持てるだけ、割れないように野草と大きい葉っぱで包んで荷物に忍ばせて、二人は街に向かって歩き出した。


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