#3本当の善の話1
賢い人は言いました。本当の悪は善の中にあり、本当の善は限りなく悪に近いと。
森を抜けると谷があり、底には大河があった。
崖には、無数の坑があってその中に街があるのだ。
元々は鉱山の街で大きく発展していたが、運搬の問題や鉱石の質の悪さから次々に閉鎖されて、中核にあった街が坑を拡張していき今のような形になっている。
主な生産品は、原石と鉄くずだが、外との交流があるために発達していた。
「暗くなる前に着いてよかった」
ナズナが言う。
「今日は、久々に布団で寝れるな」
ジンも感慨深く言う。
入り口の縦坑の前に詰め所がある。
「旅の人ですか?」
初老の男性が二人に声をかけた。
「まぁ、そうですね。」
ナズナは微妙な返し方をする。
「貴殿方は本当に運が良い。先日まで、この街は盗賊が滞在してたんですよ。」
「盗賊!?」
「えぇ、バルカス一味が三日ほどいました。何でも、この先にある遺跡にスゴいお宝があるそうで…まぁ気性が荒い奴らですが、宿代や酒代を落としていってくれるのでいいんですけど。」
「バルカスか、聞いたことない名だな。」
「知らないなぁ。」
ジンも言う。
「何にしても、関わりあいにならない方がいいな。」
「おじさん。遺跡って何?」
「おいおいジン。」
「ああ、キンダリー遺跡か。軍の調査は終わっているし、めぼしい物は皆持っていかれたと聞くし、街の者も殆んど寄り付かないんじゃよ。」
「お宝があったら盗賊達が来てくれる。盗賊が来るから助かるって訳か」
ナズナが言う。
「いやいや、嘘じゃねぇよ。盗賊どもが勝手に言い出しただけさ。」
「ジン、お宝はないってよ。」
「なぁんだ…嘘かよ」
「おいおい、お前ら…」
「大丈夫ですよ、誰にも話しませんから。あなた達のビジネスの邪魔はしません。」
「そうしてくれると助かるな…」




