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第95話 喪と焚き火
葬儀は、砦の中庭で行われた。
軍葬の礼砲の代わりに、竜たちが空へ火を吐いた。カジの発案だった。八十頭が順に、夜空へ向けて短く火を放つ。青、橙、白──火株の癖のぶんだけ色の違う火が、次々に立ちのぼって消えた。
ハギは、ゲンの隣で、声を出さずに泣いた。
八十色の火が空に立つ間、竜たちは静かだった。竜は葬式を知らない。だが、夜の見回りの足音が二度と来ないことは、たぶんもう、全頭が知っていた。
カジは、司令の帳面を受け取り、その場でカヤに言った。
「私が預かる。だが、写しを作る。手伝ってくれ」
「はい」
「三百十一頭ぶんだ。長いぞ」
「長いのは、慣れています」
その夜、医務棟の灯りの下で、二人は帳面を写した。名前。来た日。癖。石を曳くのが上手かった竜。雷が嫌いだった竜。子どもに優しかった竜。返された竜。返されなかった竜。
写しながら、カヤは気づいた。この帳面は、ただの記録ではなかった。二十年ぶんの、詫び状だった。徴用の判を押し続けた男が、押した相手の名を一頭も忘れないと決めた、その決心の形だった。
〈数える者の列に、わしも入れておいてくれ〉
カヤは手控えに、司令の言葉をそのまま書き写し、その下に一行足した。
〈入っています。最初から、ずっと。
覚え:帳面は、詫びにも、祈りにもなる。書く人間が、そうなら〉




