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第92話 渡河
橋は、夜の間に架かった。
三本の橋脚に桁が渡され、夜明け、ガルデの第一陣が川を越えた。重装の兵と、軍竜二十頭。カルナ砦の、二十年ぶりの実戦が始まった。
カヤたちは、後方の天幕で、運ばれてくる竜を受け続けた。
矢傷。火傷。裂傷。軍竜も、土工竜も、区別なく運ばれてくる。カヤは分ける目に徹した。今日手当てすれば戦線に戻る竜。休ませれば治る竜。もう戻せない竜。
もう戻せない竜の房が、夕方には埋まった。
埋まった房の前で、カヤは一頭ずつ、できることをした。水。痛み止め。温めた布。治せない竜にもできることはあると教えたのはガマで、それが一番難しい診療だと知ったのは、この天幕だった。
三日目、戦線は膠着した。橋頭は落とせず、砦も抜かれず、川の両岸で竜と人が削り合った。
四日目の夜、それが起きた。
ガルデの火矢が、砦の竜舎の屋根に落ちたのだ。
火は消し止められた。だが、竜舎は八十房、ほぼ満杯だった。火と煙と警鐘に、八十頭が一斉に怯えた。
怯えは、火株を煽る。
そして今、この竜舎には──処置されたばかりの軍火の竜が、二十二頭いた。
カヤは、天幕から駆け出しながら、四年前とまったく同じ言葉を叫んでいた。
「焦げた息の竜を、外へ! 崖側に! 早く!」




