85/138
第85話 徴用竜の列
街道は、北へ向かう竜で埋まっていた。
徴用竜の列が、何十も連なって歩いていく。荷竜、力竜、まだ若い竜、もう若くない竜。曳く兵の歩調は早く、竜たちの足は、道の石に慣れていなかった。
カヤたちの荷車は、列を縫いながら北上した。道すがら、できることをした。宿場で趾を診て、布を巻き、曳き兵に手入れの仕方を教えた。銭を取らないとカヤが言うと、兵たちは最初怪しみ、三日目からは宿場に竜を並べて待つようになった。
「先生、こいつら、北でどうなるんですか」
若い曳き兵が訊いた。自分の曳く若竜の首を、困ったように撫でながら。
「荷駄と、土工と、伝令です。ほとんどは」カヤは答えた。「前に出るのは、軍竜だけのはずです」
「はず、ですか」
「はず、です」
その先は、カヤにも分からなかった。分からないことを、分からないと言うのが、せめての誠実だった。
若い曳き兵は頷いて、それから自分の竜の首をもう一度撫でた。撫でられた若竜は、何も知らない目で、兵の手に鼻先を押しつけた。カヤは目を逸らさずに、その光景を手控えの隅に書いた。書いても何も変わらない。それでも、書かなければ、最初からなかったことになる。
十二日目、カルナ砦の崖が見えた。
川の対岸には、四年前の倍の砦が並び、その間に、真新しい橋脚が三本、川に突き出していた。




