↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
分け火と御番医
PR
83/138

第83話 戦時竜医団

師会が動いたのは、開戦からひと月後だった。


発足したのは「戦時竜医団」。言い出したのはイサギだった。四年前の連判四十一名が母体になった。


「軍属ではない」イサギは発足の席で言った。「師会の竜医団として、北辺の徴用竜と民間竜の診療に当たる。指揮系統は師会。軍の命令は受けない。軍とは『協定』を結ぶ。──二十年前の戦で、我々は竜を軍に丸投げした。同じことは、二度とやらん」


発足の席は、丘の上の大講堂だった。集まった竜医は百を超えた。二十年前の戦を知る白髪の一等から、免状を取ったばかりの三等まで。カヤは末席に座ろうとして、イサギに名指しで前へ呼ばれた。


団の副長に、カヤの名が挙がった。


同時に、もう一つの件が決まった。戦時特例による、一等への繰り上げ昇格である。


「北での権限のためだ」イサギは事務的に言った。「一等であれば、野戦での処置の判断を、誰の検分も待たずに下せる。継ぎ火の事後審査も、自身で通せる」


免状を受け取る日、イサギは廊下ですれ違いざまに言った。


「三等のとき、貴殿に言ったことがある。竜を救って人の決まりを破る者は、最後に竜も救えなくなる、と」


「覚えています」


「あれには続きがある」痩せた試験官は、前を向いたまま言った。「決まりを直しながら竜を救う者は──最後には、決まりのほうが竜を救うようになる。貴殿は今、その途中にいる。……死ぬなよ、副長」


痩せた背中が廊下の角に消えるまで、カヤは免状を持ったまま立っていた。三等の試験の日、この人はカヤを落とすために難癖を並べる側だと、ガマは言った。並べなかった。それから五年、この人はずっと、内側から門を開け続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。