第46話 立入権
裁定は、三日後に下りた。
〈一、二等竜医カヤの術規違反について
緊急避難と認め、免状は維持する。ただし向こう一年、継ぎ火の施術には御番医または一等竜医の事後検分を義務付ける。
一、術規の改定について
緊急時の継ぎ火を、事後審査を条件に認める。
一、軍施設の竜について
防疫局検疫官の立入検査権を認める。ただし事前通告制とする。
一、軍火株運用について
新規の処置を凍結し、既存の処置竜の実態調査を行う〉
勝ちと負けが、几帳面に混ぜてあった。
カヤの免状は残ったが、首輪が付いた。検疫官は軍の門を通れるようになったが、事前通告付きだ──通告してから隠す時間を、軍に与える仕組みだった。軍火は凍結されたが、廃止ではない。「実態調査」の調査主体は、軍自身だった。
「これが、内側で勝つということですか」帰り道、カヤはイサギに訊いた。
「そうだ」イサギは言った。「不満か」
「……半分」
「なら上出来だ。内側の勝ちは、いつも半分だ」痩せた試験官は、初めてかすかに笑った。「二十年前、我々は全部負けた。半分は、進歩だ。──次の半分は、貴殿らの世代が取れ」
窯裏に帰ると、診療所の前に、人だかりができていた。
ツグミが、走ってきた。
「先生! 患竜が、並んでて──朝から、十四頭!」
「じゅうよん!?」
「みんな、噜を聞いて来たんです。軍とやり合って、免状を守った竜医がいるって。それで、あの──」ツグミは、少し言いにくそうに、けれど嬉しそうに言った。「みんな、先生のこと、変な名前で呼ぶんです」




