第45話 決まりのほう
査問の二日目、証人が二人、立った。
一人目は、ガマだった。
無免状の老竜医は、証言台で、二十年ぶりに丘の上の議場に立った。
「証人は、二十年前、記録改竄により降格された身であるが」査問官が言った。「本件と、どう関わる」
「関わらん」ガマは言った。「関わらんが、見本にはなる」
老竜医は、議場を見回した。
「二十年前、俺は決まりを黙って破った。破ったことは正しくなかったと、今は思っとる。俺の見立ては正しかったが、黙って破ったせいで、見立てごと消された。竜も守り切れんかった。……あの小娘は、俺と逆のことをした。破る前に四つ数え、破ったあとに全部を書き残し、写しを配って、今日この場で『裁いてくれ』と言っとる。──あんたらが今日決めることは、二つに一つだ。書き残した者を消して、次の竜医にまた黙って破らせるか。書き残した者を認めて、決まりのほうを直すか」
二人目の証人は、イサギだった。
痩せた試験官は、一枚の連判状を提出した。
「二等以上の竜医、四十一名の連判です。内容は──緊急時の継ぎ火を、事後審査を条件に認める術規の改定案。および、軍施設内の竜に対する、防疫上の検疫権の確立の要望」イサギは、抑揚のない声で続けた。「四十一名の中には、私を含め、二十年前の処分名簿に判を押した者が、十一名おります。……同じ判を、三度は押したくない。それだけの連判です」




