第44話 刃の向き
カヤが王都に戻った五日後、師会と軍務局の合同査問が開かれた。
議題は、カルナ砦の一件──ではなかった。
「二等竜医カヤ。貴殿を、術規違反の廉で査問する」
読み上げられた訴状に、カヤは一瞬、言葉を失った。
訴えたのは、軍務局だった。曰く──継ぎ火の術は、疫時の特例として、御番医立ち会いの下でのみ許される。カルナ砦での八頭への処置は、疫時に非ず、うち四頭は立ち会いなき応急処置であり、特例の外である。よって禁術の無断使用にあたり、免状の取り上げに相当する──。
軍火の暴走は、問われない。二十年の「引退」も、問われない。問われているのは、それを止めた竜医の、手続きだけだった。
刃は、そういう向きで飛んでくるのだ。
「弁明を許す」
カヤは、立った。
「事実関係は、訴状の通りです」
議場が、ざわついた。カヤは続けた。
「カルナ砦で、あたしは特例の外で術を使いました。立ち会いの御番医は営倉の外におらず、疫時でもありませんでした。手続きの上で、あたしは規に触れています。──それは、認めます」
「認めるのか」査問官が問い返した。
「認めた上で、訊きたいことがあります」カヤは、議場を見回した。「あの夜、規に触れずに竜と竜舎と兵を守る方法があったなら、教えてください。あたしは三日考えて、見つけられませんでした。もし無いのなら──規のほうに、穴が開いています。あたしを裁くのと同じ手で、その穴も裁いてください」




