第43話 御城の影
王都、御城。
シラスは、届いた三束の写しを、三晩かけて読んだ。
カヤの手控え。カジの二十年。セイの調査。三つを突き合わせると、一枚の絵になった。二十二年前に始まった軍火研究。二年目の失敗株の漏出。灰咳。三百頭。二十年後の再来。三百八頭。処分百十二頭。そして今も、北の竜舎で燃え続けている竜たち。
老いた御番医は、写しを持って、御城の奥へ上がった。
軍務卿は、話を最後まで聞いて、穏やかに言った。
「御番医殿。それは軍の内政です」
「竜の疫は、内政では止まりませんぞ」
「灰咳は終息しました。あなたがたのご尽力で」軍務卿は、書類を扇のように揃えた。「軍火計画は、国境の守りの要です。ガルデは川向こうに砦を九つ並べた。竜の力で三倍働く軍がなければ、次の戦は保ちません。……多少の不具合は、改良で潰します。研究とは、そういうものでしょう」
「その改良の費えに、竜を二百四十一頭、使い潰したのか」
「兵は、人でも竜でも、損耗します」軍務卿は言った。「御番医殿。あなたの職は、王家の火を守ることだ。王家の火といえば──近く、代替わりの儀がありますな。四百年の火の、分け火の儀が。あれは軍務ではないが、警備は軍務です。つつがなく済むよう、我らも祈っておりますよ」
脅しとも世辞ともつかない言葉を残して、軍務卿は席を立った。
シラスは、しばらく動かなかった。
それから、独りごちた。
「……小娘の帰りが、先か。査問が、先か」




