第41話 三十頭
夜が明けても、処置は終わらなかった。
焦げ息の九頭のうち、崖で衰弱していたドウは、カヤが診たときには、もう焔嚢が破れていた。
「……間に合いません」
カヤがそう言うと、バン司令は自分の手で、竜の眉間に杭を当てた。処分ではなく、看取りに近かった。ドドの言った通りだと、カヤは思った。できるのは、苦しませないことだけの瞬間が、ある。
残る八頭。
ハチは継ぎがついた。ゲン、クワ、タツの三頭は、灰の湯気で三日かけて燃やし切り、順に継いだ。ゲンの処置の間、ハギはずっと押さえ役をやり、竜の顎の下で、小さな声で芋の話をしていた。南の村の畑の、芋の話だった。
焦げ弱の四頭は、株を継ぐには早すぎた。カヤは処置を待つ間の管理をカジに託した。餌を絞り、火を毎日決まった量だけ吐かせ、息の焦げを朝晩記録する。暴走の芽を、日々摘み続ける方法だった。
七日目の朝、カヤは砦の帳場で、集計を書いた。
〈カルナ砦・火の夜とその後
軍竜三十頭のうち
暴走死 一頭
処置により生存 四頭(ハチ、ゲン、クワ、タツ)──軍火を除去、並の株
管理下 四頭──要経過観察
無事 二十一頭
竜舎北半分焼失。人の死者、なし。ハギ竜兵、左腕に火傷〉
書き終えて、カヤは気づいた。
軍火を抜かれた四頭は、もう「兵器」ではない。ただの、火の並な竜だ。軍にとっては、損失として帳簿に載る数字だった。
その四頭の房の前に、竜兵たちが集まっていた。
誰も、損失を見る顔をしていなかった。ハギはゲンの首にもたれて眠っていて、ゲンは起こさないように、じっと首を固くしていた。芋を運んでいたころの火が、その喉で、静かに燃えていた。




