第40話 檻の中から
カヤは、走りながら聞いた。
燃えたのは二頭。ドウは崖側で衰弱、ハチは暴走の入口。残り七頭は房の中で怯えて、火株が煍られている。竜舎の北半分は消火中。
「条件を言います」カヤは、走りながら司令に言った。「一つ。あたしの手控えを返してください。竜の順番が書いてあります。二つ。カジ先生の謹慎を解いて、手伝わせてください。三つ──処分は、あたしが『間に合わない』と言った竜だけにしてください。順番はあたしが決めます」
「……いいだろう」
「四つ目」カヤは足を止めて、司令を見た。「今夜のことを、なかったことにしないでください。それだけは、あたしじゃなくて、あなたの仕事です」
司令は答えなかった。カヤも、それ以上は言わなかった。今は、竜が先だった。
処置の順番は、手控えが決めた。
最初はハチ。暴走の入口の十二歳。灰の湯気を浴びせて株を一気に燃やし切らせる時間は、もうない。カヤは応急の策を取った──焔嚢を冷やすのではなく、逆に、竜に火を吐かせ続けさせるのだ。
「吐かせるんですか!?」ハギが叫んだ。
「株の火は、喉に溜まるから体を焼くの。外に出し続ければ、嚢の中は燃え尽きるまで保つ」カヤは叫び返した。「崖に向けて、吐かせて! 号令は竜兵の仕事!」
ハチは、竜兵の号令で、崖に向かって火を吐き続けた。夜の川面に、火柱が何度も映った。対岸の物見は、王国の砦が火砲の演習でも始めたかと思っただろう。
吐いて、吐いて、吐き尽くして──ハチの火は、明け方、燃え尽きて細くなった。
そこへ、継いだ。ゴウタの荷車に積んできた株壺──ミゾレの株だった。




