第32話 燃え尽きるまで
施術は、三日がかりだった。
一日目。ゴウタを診療所の裏房に移し、水を絶やさず、体を冷やす濡れ布を四人がかりで替え続けた。夕方、王家の灰を濃く溶いた湯気を、一刻、吸わせた。
焔嚢の株が、餌に食いついた。
夜、ゴウタの火は、見たこともない色になった。青白を通り越して、ほとんど白。竜の喉が炉になったようだった。ツグミが怯えた顔で訊いた。
「先生、竜が、燃えちゃう」
「燃やしてるの」カヤは喉の熱を、濡れ布越しに測り続けた。「株の群れには寿命がある。燃えた分だけ、先が短くなる。──今夜で、三月ぶん燃やす」
二日目。もう一度、灰の湯気。
火の色が、変わり始めた。白から、黄色へ。強すぎた火が、峠を越えて、細り始めた。ゴウタは立てなくなったが、目はまだ濁り切っていない。カヤは喉に耳を当て、株の燃える音を聞いた。暴れる音が、弱っていく。
「見切りどきが全てだ」シラスが横で言った。「早ければ先住が残って新しい株を焼く。遅ければ竜が保たん。……いつだ、小娘」
三日目の明け方、カヤは言った。
「今です」
管を入れた。ミゾレの株──窯裏の十九頭の喉で殖え続けている株だ。株分けは、貸す側の火もわずかに削る。カヤがそれを隠さずに話すと、十九頭の飼い主は、一軒残らず頷いた。自分の竜がその火に救われたことを、忘れた家はなかった。──その株を、燃え尽きかけた嚢の襞の奥に植えた。
それから三日、餌を絞って、待った。
六日目の朝、ゴウタの喉に手を当てたカヤは、掌に、覚えのある熱を感じた。強すぎも、細すぎもしない。並の、生きた火の熱だった。
「……ついた」
水売りは、裏房の土間に膝をついて、しばらく立てなかった。
その晩、カヤは手控えに長く書いて、最後に一行、足した。去年の自分の書き付けの、隣だった。
〈六日しか保たない竜には、別の道がまだない。探すこと〉
〈──見つけた。逆継ぎ火。強すぎる火は、燃やし切ってから継ぐ〉




