↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
軍火
PR
29/138

第29話 軍の財産

ゴウタの診立ては、一晩かかった。


結論は、三行だった。カヤは手控えに書いた。


〈徴用竜ゴウタ・牡四歳。焔嚢に人為の株の入れ替え痕。植えられた株は火力が並の三倍、殖えも三倍。ただし嚢の襞が火傷で硬化、株は宿主の体力を食って燃え続けている。


このままなら、余命は一年ない。


覚え:これは病気ではない。設計だ〉


「株を抜いて、並の株に継ぎ替えれば、助かる見込みはあります」カヤは水売りに言った。「継ぎ火の応用です。ただ──」


「ただ?」


「軍に、届けが要ります」


継ぎ火は、疫時の特例として御番医立ち会いでのみ許される術だ。今は疫時ではない。それ以前に、もっと根本の壁があった。


翌日、カヤは丘の上の師会に問い合わせ、その足で軍務局の窓口に行き、夕方、答えを持って帰ってきた。


「ゴウタの体は、水売りさんのものです。でも、喉の中の株は──軍の財産だそうです」


診療所が静まった。


「軍火株は軍の機密品で、返却竜の体内にあっても所有権は軍にある。抜くこと、調べること、他人に見せることは、器物損壊と機密漏洩にあたる」カヤは窓口で書き写した条文を読み上げた。「治療するなら、軍に竜を再度引き渡せ、と」


「引き渡したら、どうなるんです」水売りが言った。


「軍で処置する、と言っていました。処置の中身は、機密だそうです」


「──引き渡した竜が、帰ってきた例は」


カヤは、答えられなかった。窓口の役人も、答えなかったのだ。


夜、ガマが酒を出した。珍しく、カヤの前にも湯呑みを置いた。


「竜の喉の中に、軍の財産がある」老竜医は言った。「大した時代になったもんだ」


「先生。あたし、抜きます」


「だろうな」ガマは酒を舐めた。「なら、抜く前にやることが二つある。一つ、シラス様に術の相談。軍火は並の株より強い。継ぎ火の手順が、そのままじゃ通らん」


「二つ目は」


「セイさんに、法の相談だ」ガマは湯呑みを置いた。「二十年前の俺は、決まりを黙って破って、竜を守り切れなかった。今度は──破る前に、破り方を設計する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。