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継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
軍火
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24/138

第24話 不適

検査の日、カヤは診療所の前に机を出した。


机の上に、十六冊の診断書。


軍の検査官は二人組だった。年かさの下士官と、帳面持ちの若いの。竜を一頭ずつ歩かせ、体高を測り、火を吐かせて、帳面に丸を付けていく。


三頭目のクロの番で、カヤは診断書を差し出した。


「その竜は、右後趾に慢性の瘤があります。石畳の長距離は保ちません。徴用不適です」


下士官は、診断書とカヤを見比べた。


「……あんたは」


「窯裏の診療所の、三等竜医カヤです。この十六頭は全頭、あたしの患竜です。診断書は全頭ぶん用意してあります」


「全頭、不適だとでも?」


「いいえ」カヤは言った。「十六頭のうち、徴用に耐える体なのは五頭です。残り十一頭は、瘤、古傷、歳、妊み──それぞれ理由が書いてあります。嘘は一つも書いていません。疑うなら、その場で照合してください」


下士官は、診断書の束をめくった。所見は細かく、日付は検査の告知より前に遡り、治療記録と繋がっている。突ける穴が、なかった。


「──五頭は、もらっていくぞ」


「五頭の飼い主には、あたしから話します。それと」カヤは一冊の帳面を差し出した。「五頭の診療記録の写しです。軍の竜舎の竜医に、渡してください。この竜たちの体を、一番よく知っているのはこの帳面です」


下士官は、受け取るかどうか、少し迷った。


受け取った。


夕方、ガマが言った。


「十一頭、守ったな」


「五頭、守れませんでした」


「そう数えるやつは、竜医に向いとる」ガマは火鉢の火を掻いた。「だが、覚えておけ。今日ので、お前の名は軍の帳面に載った。決まりに強い竜医ってのはな、決まりを作る側から見れば──目障りな竜医、ということだ」

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