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第23話 竜徴令
布告は、雪解けと一緒に来た。
〈竜徴令
一、北辺防備のため、王国内の荷竜・力竜より壮健なる竜を徴用す
一、徴用竜は軍竜舎に移管し、軍務の間、飼料・診療は軍の負担とす
一、徴用竜一頭につき、飼い主に年金三枚を給す
一、徴用の適否は軍の検査官が定む〉
窯裏の路地が、ざわついた。
金三枚は、大金だ。荷竜一頭の年の稼ぎに近い。だが竜一頭で食っている家から竜を取れば、その家は金三枚を食い潰したあと、何も残らない。
「徴用された竜は、どうなるんです」パン屋の女房が訊いた。
「軍務が終われば返す、と書いてある」ガマは布告の写しを卓に置いた。「書いてあるだけだ、とは言わんがな。……二十年前の戦のときも竜徴はあった。返ってきた竜を、俺は何頭か診た」
「どんな竜でした」
ガマは、少し黙った。
「よく働く竜だった。火が、妙に強くてな」彼は言った。「そして、どの竜も、若いのに老竜みたいな体をしとった。五年経たずに、みんな死んだ」
診療所が静まった。
「先生」カヤは訊いた。「それ、診断は」
「つかなかった。軍から返された竜の焔嚢を開けることは、飼い主が嫌がった。せっかく帰ってきた竜だ、縁起でもないと」ガマは布告を畳んだ。「だから俺は、二十年、あれが何だったのかを知らん」
三日後、軍の検査官が窯裏に来ると告げられた。
対象は、窯裏の荷竜、十六頭。




