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継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
軍火
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23/138

第23話 竜徴令

布告は、雪解けと一緒に来た。


〈竜徴令


一、北辺防備のため、王国内の荷竜・力竜より壮健なる竜を徴用す


一、徴用竜は軍竜舎に移管し、軍務の間、飼料・診療は軍の負担とす


一、徴用竜一頭につき、飼い主に年金三枚を給す


一、徴用の適否は軍の検査官が定む〉


窯裏の路地が、ざわついた。


金三枚は、大金だ。荷竜一頭の年の稼ぎに近い。だが竜一頭で食っている家から竜を取れば、その家は金三枚を食い潰したあと、何も残らない。


「徴用された竜は、どうなるんです」パン屋の女房が訊いた。


「軍務が終われば返す、と書いてある」ガマは布告の写しを卓に置いた。「書いてあるだけだ、とは言わんがな。……二十年前の戦のときも竜徴はあった。返ってきた竜を、俺は何頭か診た」


「どんな竜でした」


ガマは、少し黙った。


「よく働く竜だった。火が、妙に強くてな」彼は言った。「そして、どの竜も、若いのに老竜みたいな体をしとった。五年経たずに、みんな死んだ」


診療所が静まった。


「先生」カヤは訊いた。「それ、診断は」


「つかなかった。軍から返された竜の焔嚢を開けることは、飼い主が嫌がった。せっかく帰ってきた竜だ、縁起でもないと」ガマは布告を畳んだ。「だから俺は、二十年、あれが何だったのかを知らん」


三日後、軍の検査官が窯裏に来ると告げられた。


対象は、窯裏の荷竜、十六頭。

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