第22話 ツグミ
少女は、カヤの肩にも届かない、小柄な女の子だった。継ぎの当たった外套を着て、寒さで赤くなった手に、小さな包みを一つ抱えている。
「ツグミといいます。弟子にしてください」
カヤは、既視感に少しめまいがした。一年前、自分が同じ戸口で同じことを言った。
「……うちは給金は出ないよ。飯と寝床だけ」
「知ってます」
「危ないよ。竜は蹴るし、噛む」
「知ってます。うちにも、竜がいたので」
いた、という言い方に、カヤは手を止めた。
ツグミの家は東竜舎に荷竜を預けていた。名はハコ。牝の十九歳。灰咳の冬、処分された百十二頭の中にいた。
「ハコは、罹ってませんでした」ツグミは、抱えた包みを開いた。中から、鱗が一枚出てきた。掌ほどの、飴色の鱗。「竜捌きのドドさんが、あとで届けてくれました。『おたくの竜は白だった。焔嚢はきれいなもんだった』って。……焼かれる前に、一枚だけ剥がしといてくれたそうです」
白の四十四頭。
数えた者がいたから残った数字の、その一頭が、この子の竜だった。
「あたし、悔しくて」ツグミは鱗を握った。「でも、誰を恨めばいいのか、分かんなくて。防疫局も、師会も、悪気じゃなくて決まりでやったんだって、父ちゃんは言うんです。決まりが竜を殺すなら──あたし、決まりに強い竜医になりたい。カヤ先生みたいに」
カヤは、奥のガマを見た。
ガマは薬研を挽いたまま、顔も上げずに言った。
「押さえからだよ」
それが採用の言葉だと理解するまで、ツグミは三秒かかった。




