第135話 白い竜の見送り
ユキの出立の日、御城の門前に、思いがけない数の都人が集まった。
雪を融かして北から歩いてきた白い竜は、この冬の王都で、誰もが知る竜になっていた。四百年の火の終わりと、十一代目の火の始まりを、都人はこの竜の姿と重ねて覚えたのだ。
アサヒは、門まで見送りに出た。
二頭の竜は、来た日と同じように、鼻先を合わせた。それから、アサヒは半歩下がり、喉を反らして、朝の空へ、青白い火をひと筋、高く吐いた。
ユキが、応えた。同じ青白い火が、並んで空に立った。
同じ株の、同じ色の、二筋の火だった。ひとつは御城に残る火。ひとつは村へ帰る火。見上げた都人たちは、二筋の火が同じ色であることの意味を、誰に説明されるでもなく、分かった。
窯裏の路地では、竜たちが軒下に並んで、白い竜の行列を見送った。ミゾレの子ら十九頭。ゴウタ。クロ。ゲンとソラ。みな、同じ株の火を喉に灯した、親類のようなものだった。
行列の最後尾を、カヤが歩いた。
背中の鞄には、手控えと、シラスの手帖。隣にはハギとゲン。楢峡まで、送りの旅である。ガマは診療所の戸口で、いつも通り、餞別の言葉を一つだけくれた。
「春の峠でも、竜の趾は割れるぞ。軟膏を多めに持て」
それが、老竜医の愛情表現の全部だった。
路地を出るとき、カヤは一度だけ振り返った。戸口で、ガマとツグミとソラが並んでこちらを見ていた。一年前、北へ発った朝より、見送りが一頭増えている。帰る場所の頭数が増えていく。それがこの診療所の、いちばんの経過良好だった。




