第131話 裁定
年が明けて、一連の裁定が下りた。
〈一、軍務卿を罷免し、爵位を剥奪。王家の株窃盗教唆ほか、罪状二十一件につき終身の禁錮。
一、技官ムベ、同じく禁錮。軍火研究の全記録を師会と防疫局に移管。
一、防疫局検疫官の立入検査権につき、事前通告制を廃止する。防疫に、聖域を認めない。
一、御番医の門外不出の誓いを改める。王家の竜の検分記録は師会と共有し、外部竜医の陪席を常設とする〉
事前通告制の廃止──五年前、セイが「半分」しか取れなかった残りの半分が、これで埋まった。
裁定の写しを持って、セイが窯裏に来た。元検疫官は、綴りを卓に置いて、珍しく、長いこと黙っていた。
「……十二年、〈異常なし〉と書き続けた帳面から始まって」セイは、ようやく言った。「ここまで、来ました」
「来ましたね」
「イサギ殿が、言っていました。内側の勝ちは半分ずつ、二度勝てば一になる、と。……三度目で、聖域が消えた。数えて、書いて、綴じて──それだけのことを、全員でやり続けた結果です」
ガマが、火鉢の火を掻きながら言った。
「二十年前に落ちた俺が言うのもなんだがな」老竜医は、口の端を少し動かした。「……帳簿が、やっと竜に追いついたか」
帳場の火鉢で、薬缶が鳴っていた。誰も、すぐには動かなかった。二十年は、長い。長かったぶんだけ、この静かな夜は、誰の手柄でもなく、全員の手柄だった。




