↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
分け火と御番医
PR
130/138

第130話 十一代目

記録を巡って、最後のひと揉めがあった。


御番医の公式の記録に、この施術をどう書くか。


「〈王家の火、継続〉と書くべきだ」年長の御番医が言った。「民には、四百年の火は続いていると──」


「それは、嘘です」スバルが遮った。「私は施術に反対した人間ですが、記録に嘘を書くことには、もっと反対です。四百年の火は、終わりました。私たちは五人とも、その刻を数えて、手帖に書いた。あれを無かったことにするなら、私たちの四百年の記録は、全部が信用を失う」


議論は王の前に持ち込まれ、王は、カヤに意見を求めた。


「記録は、正直に」カヤは言った。「そのうえで、こう書けばいいと思います」


カヤが口にした文を、書記が写し、王が認め、御番医五人が連署した。四百年の検分録の、新しい頁の一行目である。


〈王家の火、十代にて燃え尽く。その終わりは安らかにして、五名の番人これを看取る。


御竜アサヒ、楢峡ミゾレ系の火を継ぎ、健やかなり。


これを十一代目の火とす。


火は絶え、火は継がれ、竜は生きる〉


公表の布告は、意外なほど静かに受け止められた。


都の人々は、四百年の火の終わりを悼み、それから、雪を融かして歩いてきた白い竜の話をし、御城の上に立った細い火の話をした。国の柱は折れなかった。柱は、火ではなかったのだ。火を絶やすまいとしてきた人と竜の営みのほうが、柱だった。


布告の写しを、ツグミは帳場の壁に貼った。飴色の鱗と、軍務卿失脚の貼り紙の、隣だった。「並べると、うちの壁、すごいことになってますね」と弟子は言った。処分された竜の鱗と、罰された者の名と、継がれた火の記録。壁一枚に、この物語の帳尻が、だいたい揃っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。