第128話 四百年の終わり
夜明け前、四百年の火は、終わりに入った。
アサヒの喉の奥で、株の燃える音が、ひとつ、またひとつ、消えていく。カヤは耳を当てたまま、動かなかった。堂の中は、灯りの芯の鳴る音しかしなかった。
スバルが、静かに、刻を数え始めた。
四百年前から続いた群れの、最後のひと群れが燃え尽きるまでの刻を、五人の御番医が、それぞれの手帖に書き取っていく。それが、彼らの弔いだった。
カヤの指の下で、熱が、底に触れた。
まだ温い。だが、もう燃えていない。嚢の中の火が、熾から、余熱に変わった瞬間だった。
早ければ、焼かれる。遅ければ、冷える。
シラスの声が、手帖の中から聞こえた気がした。見切りどきが全てだ。……いつだ、小娘。
「──今です」
カヤは、管を取った。
隣で、ユキが首を伸ばした。採りたての株は、すでに壺に採ってある。白い竜の喉から、四半刻前に分けたばかりの、湯気の立つような勢いの株だった。
管が、アサヒの喉に入る。
百五十年の株が、四百年の嚢の、まだ温かい襞の奥に、植えられた。
カヤは管を抜き、濡れ布で喉を包み、それから、堂の全員に向かって言った。
「植えました。……ここからは、三日、待ちます」
東の窓が、白み始めていた。
四百年の火が消えた朝は、雪のあとの、静かな晴れだった。
堂の高窓から、朝の光が幾筋も射し込んで、白い床に長い線を引いた。五人の御番医は、それぞれの手帖を閉じ、閉じた手帖を胸に当てて、壇に向かって深く頭を下げた。四百年への礼だった。それから五人は、申し合わせたように、眠っている銀の仔竜へ向き直って、もう一度、同じ深さで頭を下げた。




