↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
分け火と御番医
PR
126/138

第126話 ちゃんと揉める

施術の前夜、スバルとカヤは、御竜の間の控えで向き合った。


「反対だ」スバルは言った。「最後に、もう一度だけ言っておく。私は、この施術に反対だ。四百年の火は、この国が四百年、守り抜いた唯一のものだ。それを守るのが私の誓いで、私は明日、自分の誓いが破られるのを見る」


「はい」


「……その上で、立ち会いを務める」御番医は、続けた。「見届けるのも、番人の仕事だからだ。そして万一、術の途中で判断が割れたら、私は君と揉める。竜の安全のためなら、術の中断も要求する。事後審査でも、書くべきことは全部書く」


「それでお願いします」カヤは、頭を下げた。「反対のまま立ち会ってくれる人が隣にいるのが、一番安全な手術です。賛成だけの部屋は、間違いに気づけないので」


スバルは、少し黙って、それから、ふ、と息を吐いた。


「……シラス様が、なぜ最後にあんたを呼んだのか、この頃ようやく分かってきた」


「なぜですか」


「あの人は、四十年、賛成だけの部屋にいたんだ」スバルは言った。「部屋の外から戸を叩く者を、ずっと待っていたんだと思う」


二人は、朝まで手順を詰めた。飢えさせの要らない継ぎ火。灰の餌を止め、四百年の群れが自然に尽きていくのを見極め、尽き切る寸前──空きかけて、しかしまだ冷え切らない嚢に、採りたての株を植える。


見切りどきが、全てだった。


早ければ、残った四百年の群れが新入りを焼く。遅ければ、嚢が冷え、アサヒの体力が尽きる。


その見極めは、術ではなく、目だった。


夜明け前、手順書の最後の行を書き終えて、スバルが筆を置いた。「……訊いておきたい。あんたは、怖くないのか」


「怖いです」カヤは即答した。「怖くなくなったら、この仕事は辞めます」


「そうか」御番医は、少しだけ肩の力を抜いた。「なら、隣にいられる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。