第125話 アサヒの答え
翌朝、カヤは御竜の間に、器具を並べた。
継ぎ火の器具一式。管、壺、灰、濡れ布。隠さず、全部並べた。それから、伏せているアサヒの前に座り、全部を話した。
「アサヒ様。あなたの喉の火は、もうすぐ尽きます。四百年、あなたの家系だけで継いできた火です」
若い御竜は、頭を起こして、カヤを見ていた。
「尽きる前に、入れ替える術があります。植えるのは、そこにいるユキの火。楢峡の村の、ミゾレという竜の火です。四百年の火は、終わります。あなたは、生きます。……あなたの喉で燃えるのは、明日からは、村の火です」
堂の入口に、王と、御番医五人が立っていた。誰も、口を挟まなかった。
「断っても、いいんです」カヤは言った。「そのときは、あたしたちは最後まで、四百年の火と一緒に、あなたを支えます。どちらでも──あなたの答えが、答えです」
アサヒは、長いこと、カヤを見ていた。
それから、ゆっくりと首を伸ばした。
弱った首は、途中で一度揺れた。隣のユキが、すっと体を寄せて、支えた。白い竜の肩を借りて、銀の竜は首を伸ばし切り──並べられた器具の横に、顎を、載せた。
喉を、カヤのほうに向けて。
ミゾレが。ユキが。そしてアサヒが。教わった者のいない、同じ答えだった。
堂の入口で、御番医の誰かが、小さく息を呑む音がした。彼らは四百年ぶんの記録を読んでいる。だが、竜が自分から喉を差し出す姿を見たのは、五人とも、初めてだったのだ。記録は読める。答えは、見なければ分からない。
堂の入口で、王が、長い息を吐いた。
「……見た」王は言った。「竜の答えを、確かに見た。──継げ。責は、余が負う」
「いいえ、陛下」カヤは、器具を取りながら言った。「責は、判を押す者が負うものです。判は、あたしが押します。……陛下には、証人をお願いします。四百年の火が、逃げも隠れもせずに終わったことの、証人を」




