124/138
第124話 微行
その夜、御竜の間に、王が来た。
供を二人だけ連れた、微行だった。カヤは夜の検分の途中で、堂の入口に立つ人影に気づき、器具を置いて礼をした。
「続けよ」王は言った。「見に来ただけだ」
カヤは、続けた。アサヒの喉に手を当て、熱を数え、記録を書く。ユキが床石を温め直す。王は、柱の陰から、長いことそれを見ていた。
やがて、王は静かに訊いた。
「そなたが、継ぎ火の竜医か」
「カヤと申します」
「四百年の火を終わらせよ、と申しておるそうだな」
「終わらせるのではありません」カヤは、手を止めずに答えた。「もう、終わりかけています。あたしが申し上げているのは、火の終わりに、竜まで道連れにさせない道があるということです」
「……四百年の誓いは、国の柱だ。あの火が変わらぬ限り、国は変わらぬ。民は、そう信じてきた」
「はい。ですから、これは陛下のお決めになることでも、あたしの決めることでもないと思っています」
王が、初めてカヤを正面から見た。
「では、誰が決める」
「アサヒ様です」カヤは言った。「竜は口が利けません。でも、答えます。あたしは五年前、楢峡の老竜に同じことを訊きました。あの竜は、答えました。──明日、この場で、アサヒ様に訊きます。陛下も、ご覧になってください。竜の答えというものを」




