第122話 冬至まで
軍務卿の追い落としで、二十二年越しの検算は合った。
だが、人を裁く紙が、竜の火を温めてくれるわけではない。
アサヒの熱は、下がり続けていた。灰の餌は、もう三度に一度しか効かない。若い御竜は一日の大半を眠って過ごし、起きている間は、じっと堂の天井を見ていた。竜は痛みを隠す。だが、隠しているものがあることは、見る者が見れば分かった。
カヤの手控えの線は、予測の通りに底へ向かっていた。
〈冬至まで、二十日。株の群れ、限界の兆し。
夜間、群れの燃えが乱れる刻が出始めた。尽きる前に暴れる型に入りつつある。
覚え:待つ道は、もう安らかではない〉
合議は、まだ割れていた。献上株の一件で門外不出派は声を失っていたが、「外の株で継ぐ」という判を押せる者も、いなかった。四百年をこちらの手で終わらせる──その一行の重さの前で、五人の御番医は、みな筆を止めた。
スバルが、夜、窯裏に来た。三度目の、夜の外套だった。
「時間がない。分かっている」御番医は、土間に立ったまま言った。「だが、私はまだ、判を押せない。私の誓いは、あの火を守ることだ。あの火を終わらせる判は、私の手からは──出ない。出せない」
「はい」
「怒らないのか」
「スバルさんは、四百年の番人です。番人が最後まで番人でいてくれるから、あたしみたいな外の目に、意味があるんです」カヤは言った。「判は、あたしが押します。押せる者が、押すべき判です。……ただ、その前に、二つ、確かめることがあります」
「二つ?」
「一つは、もう都に着いています」カヤは、北の方角を見た。「もう一つは──アサヒ様、本人です」
スバルが帰ったあと、カヤは器具棚の前に立った。継ぎ火の器具一式を布の上に並べ、一つずつ検めて、また仕舞った。判を押す者の夜の仕事は、眠ることだ。分かっていて、手が器具を離さなかった。




