第120話 株の検分
検分は、御竜の間の隣室で行われた。
立ち会いは御番医五名、軍務卿、そして外の目としてカヤ。卓の上に、献上の壺が置かれた。
カヤは、封を検め、蓋を開け、匂いを確かめ、株の色を見た。それから、持参した器具で株の一片を採り、灰の餌を微量与えて、燃え方を確かめた。
時間をかけた。百二十、数えるほど。
儀の前夜、保管室の錠の前で技官が使ったのと、同じ長さだった。カヤは覚えている。覚えたものは、いつか使う。検分の間、部屋の誰も口を開かず、軍務卿の扇だけが、小さく二度、鳴った。
「所見を述べます」カヤは、顔を上げた。「この株は、王家の株です。それは間違いありません。色、殖えの型、四百年ものの澄み──全部、合っています」
安堵の息が、部屋に満ちかけた。
「ただし」カヤは続けた。「この株は、汚れています」
部屋が、止まった。
「燃やすと、焦げの匂いがします。ごくかすかに。軍火の癖です。この株は、軍火株と同じ嚢で飼われたことがある。それから──」カヤは、灰の上の燃えかすを指した。「燃えかすに、緑がかった炎が一瞬立ちました。灰咳の株の癖です。この株は、灰咳系の株の近くにも置かれていた」
「馬鹿な」軍務卿の声が、硬くなった。「言いがかりだ。素性の知れぬ検分で──」
「素性なら、あたしより、この株のほうが知れています」カヤは、静かに言った。「王家の株で、軍火と灰咳の隣で飼われていた株。そんなものが、この世に一壺だけあります。──二年前の儀の前夜、保管室から半分消えた、あの控えの壺の中身です」




