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継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
分け火と御番医
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116/138

第116話 ユキに訊く

翌朝、カヤは竜舎に、採取の器具を並べた。


五年前、ミゾレの前に並べたのと、同じ器具だった。並べ方も、同じにした。それから、白い竜の前に座って、全部を話した。


「王都の、御城に、火の消えかけてる竜がいる。アサヒっていう名前で、あんたより二つ下の女の子。四百年続いた火の、最後の一頭」


ユキは、伏せたまま、カヤを見ていた。


「あんたの株なら、継げる。継いだら、あんたの火は少し短くなる。それと──冬の峠を、王都まで歩いてもらうことになる。雪の峠。十日の道。壺じゃ駄目なの。あんたの喉ごと、来てもらうしかない」


カヤは、そこで言葉を切った。


「断っても、いいんだよ。あんたはこの村の竜で、この村の湯が、あんたの仕事だから」


ユキは、長いこと、カヤを見ていた。


それから、ゆっくりと立ち上がり、竜舎の戸口へ歩いて、外を見た。北の峠の方角だった。初霜の朝で、峠の上のほうは、もう白かった。


白い竜は、白い峠をしばらく見て、それから戻ってきて、並べられた器具の横に──顎を、載せた。


喉を、カヤのほうに向けて。


ミゾレと、同じだった。教えた者は、誰もいないのに。


「……分け火ってのは、そういうものまで継ぐのかもしれんな」


戸口で見ていた村長が、掠れた声で言った。


カヤは、ユキの喉に額を付けて、一度だけ、短く言った。


「ありがとう。──行こう」


竜舎の外で、村長が盛大に洟をかんだ。「……泣いとらんぞ。寒いだけじゃ」


「はい」


「ミゾレのときも、寒かった」


「はい」


初霜の朝の竜舎で、人と竜は、それぞれのやり方で同じことを決めた。

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