↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継ぎ火の竜医  作者: 川中アキラ
分け火と御番医
PR
114/138

第114話 白い頁の前

夜の帳場で、カヤはシラスの手帖を開いていた。


白い頁の手前、老人の最後の字。


〈門外不出の誓いと、竜の命の、どちらを取るか、誰かが決めねばならん。


決めるのは、竜をようく見た者だ〉


「見てきました」カヤは、声に出して言った。「五年、見てきました。だから、決めます」


ガマが、薬研の手を止めずに言った。


「言ってみろ」


「継ぎ火です。株は、ユキ」


「根拠は」


「王家の株は、弱っても大群です。貸し火程度の株を足しても、先住の数に飲まれて焼かれる。押し切って根付くには、今この国で一番勢いのある株元が要る──殖えが並の倍、災をくぐった系統、若くて健康な宿主。数字で残るのは、ユキだけです」


「壺で運べばいい。本人を引っ張ることはない」


「冬の輸送では、壺の株は冷えて勢いを落とします。十日の道の果てにあるのは、四百年の大群です。勢いの落ちた株では、負けます」カヤは言った。「採りたての株が要る。つまり──ユキに、王都まで来てもらうしか、ないんです」


「冬の峠を、か」ガマは、そこで初めて手を止めた。「……雪の峠を、竜に歩かせるつもりか」


「訊きに行きます」カヤは言った。「ユキに。そして、村に」


ガマは、薬研を挽き直した。挽きながら、独り言のように言った。「ミゾレの仔に、ミゾレと同じ役目が回るか。……血も繋がっとらんのにな」


「繋がってるのは、火です」


「ああ」老竜医は、それ以上言わなかった。それ以上言う必要のないことを、この帳場では言わない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。