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第113話 城の箱
御城は、危機を箱に入れて蓋をした。
ミカゲの死は公にされたが、アサヒの火の危機は伏せられた。戦後の国に、「王家の火が絶える」という報せは劇薬すぎた。講和はまだ若く、市の米の値は高く、人心は乾いた藪のように、火の噂一つで燃え上がりかねなかった。
箱の中で、時計だけが進んだ。
カヤは十日ごとに登城し、アサヒを診た。灰の餌の効きは、目に見えて鈍っていった。若い御竜は食が細り、寝ている時間が延び、それでもカヤの顔を見ると、自分から首を差し出した。
診るたび、手控えの数字が一段ずつ下がった。
〈秋の初め。熱の戻り、前回比九割〉
〈秋の半ば。八割〉
〈秋の終わり。七割──細りの速さ、増している〉
カヤは、数字の先を引いた。線は、冬至のあたりで底を打つ。
残された時間は、ふた月と少し。
登城のたび、カヤは帰りに書庫へ寄り、四百年の検分録を読んだ。看取りの記録を探したのだ。なかった。九回の代替わりは、九回とも、親の火が尽きる前に仔へ継がれていた。火が尽き切るところを、王家の記録は一度も見ていない。見ずに済んできたことがこの家の幸運で、いま、その幸運が尽きようとしていた。
そして、継ぎ火をやるにせよ、使える株の当ては──カヤの手帖の中に、一つしかなかった。




